急ぐ理由

2週間ぶりくらいにジョギングをした。少し前までは、毎日走ることを日課にしていたにも関わらず、それができなくなってしまった。だから今日はむしろ走りたくて仕方ないくらいだった。ただ、夏はとてもじゃないけれど暑くて、特に平日、ちょっとの距離であっても、走ることはできそうにない。朝か夜ならなんとかなるか?なりそうだけれど、ならないかもしれない。こういうときはいつだって、どっちつかずだ。

 

坂道を下っていると、数十メートル先で女の子がこちらに向かって走っているのが目に入った。ジョギングではないことはすぐに分かった。全速力で必死に走っている様子だったし、なにより可愛らしい私服姿だった。走りづらそうで仕方ないように見えた。

 

この天気では汗をかいてしまって大変だろうに、と思っていたら、すぐに道を曲がって見えなくなった。そして、すぐに戻ってきた。道を曲がった角に家があって、忘れ物を、例えばスマホや財布などを取りに戻ったのかもしれない。それにしても、必死に走っている。こんなに暑いのに、ジョギング以外で走るなんて大変だな。一瞬、後ろを、つまりこちらを向いた気がした。ようやく、彼女が急いでいる理由が分かった。

 

少し先にはバス停。ほっとしたようにバス停前で走るのをやめる彼女。私がそのバス停と彼女とすれ違った、その数秒後に、後ろからはバスが停まるピピーピピーというブザー音が。間一髪だった。

 

バスに乗る直前に忘れ物に気づいた(想像でしかない)彼女が走って戻ったその必死さが伝わる。翻って自分は、気分転換に、なんて言いながらゆっくりジョギングをしていることがなんとなく恥ずかしくなった。ブランクがあってのジョギングだったため、ペースをあげることはできなかったけれど、走り終えたら息も絶え絶え。理由は違えど、彼女と同じくらいのエネルギーを消費しただろう。