糸電話

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文房具屋が好きだ。別にこだわり文具を使っているわけでもなく、また、ないからといって特別困ることもいまはあまりないけれど、小さな文房具屋に入り、店に並ぶ文房具を見ていると、どうやって使おうか、とわくわくしてくる。

 

将来、例えば何らかの理由で仕事ができなくなったり、新しいことを始めるタイミングが訪れたりしたら。企てたいことの一つに、文房具屋がある。自分自身、文房具をもつことでなんだか気分があがるということがある。冷静に考えたら使いみちなんてないのに、どうやってつかってやろうかとあれこれ想像することがある。そういうことって、なにも自分だけじゃないでしょう。みなさんもどうぞ、想像してみては。そんな単純な動機だ。あとは、スマホとか、インターネットとか、SNSとか、あくまでもそういうツールではなく、アナログな道具を使って想いを伝えたり、気持ちを文字にしたり、消したりしたいのだ、という、いわゆるテクノロジーへの反抗心もある。

 

お店の名前は、実はもう決めている。以前大好きな本屋さん主催の、店の名前を考えるというワークショップに参加して、つくったものだ。「売る商品のテーマは『愛』」。このキーワードから、あれこれとブレインストーミングを繰り返し、出てきた言葉が「ミエナイイト」だった。見えない糸。想いを伝える人と人との間には糸があって、それでしっかりと結ばれている。だから想いは伝わるのだ。そんな、言葉にするとちょっとクサイけれど、ストーリーが頭のなかにあった。

 

小さいころ、糸電話で遊んだ記憶がある。二つの紙コップの裏に糸をくっつけて結ぶ。少し離れたところには一方の紙コップを耳につけた友達が。その友達に向かって、紙コップを口にあててしゃべる。交代すると、肉声よりもはっきりと、友達の声が耳に届き、驚いた。

 

声が糸を通って相手に届く。とするならば、遠く離れた友人に手紙を書いて送るのも、友人との間を結ぶ見えない糸を通って手紙が行き来しているということなのではないか。現実的には郵便屋さんが届けてくれるそれも、見えない糸が実はあって、その糸のおかげなのだと思うと、ちょっとロマンチックだ。世の中にはきっと無数の見えない糸がある。他人に情報を知らせ、想いを伝え、志を残す。その糸の役割を、世の文房具屋は担っている。だとしたら、自分もその役割を担う一人でありたい。そう思った。

 

詩人のウチダゴウさんに書いてもらった店の名前の紙。それは自分の机の見やすい場所に貼っている。なんとなく眺めていると、別に何の根拠もないのに、その名前のお店を開くことをいつか実現できそうになるから不思議だ。

  

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