W:WALG -win a losing game-

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win a losing game.

 

「逆転勝ち」をテーマにしたこの腕時計にひかれたのは、大学生の時だ。新宿のヨドバシカメラ時計館で、ひとめぼれしたのだったと記憶している。当時からなんとなく腕時計が好きで、かっこいいものをと探しているなかで見つけたのは、剣をモチーフにしたシャープなシルエットと赤紫の文字盤が印象的な時計だった。

 

リコーエレメックスのHPを見てももう販売していない。だから充電がまったくできなくなってしまったいま、その修理方法を探ろうにも、どうしてよいか分からない。街の時計屋さんに持って行って、こういう充電式の腕時計なんですけどどうしたらよいでしょうか、と言ったら、修理してくれるのだろうか。特殊すぎて、手に負えないと言われてしまいそうで怖い。それでも、直してまた腕に嵌めたいと思うくらいには、気に入っている腕時計だ。

 

 

振り返れば自分の人生、思ったことが思った通りに叶ったということ、選択したことが大正解だったという実感を持ったことが、あまりない。こうだ、と思ったその通りに進むように自分という船の舵を握ってきたつもりだけれど、行き止まっては別の方向へ転換し、を繰り返していまに至っている、といった方が近い。でもそれはいまの進路に進んだことを後悔しているということでは決してなく、結果として選んだその道が、自分にとって正しかったのだと納得するために、その道の良いところを後付けで探すような、そんな感覚だ。あぁ、おれはもうダメだ、とその場にへたり込んだりしなかったからこそ、いまこうして動いていられるのだとも思う。

 

そんな自分の人生が、また5年10年と進んでいき、いまとは別の環境に身を置いているとしても、それはこれまでの積み重ねの結果であり、これまでが無駄だったということにはならないだろう。これまでが負け戦だったとは言わないが、「こうだったらいいなぁ」という自分の理想像にはとうてい達していないので(それは周りの環境に対してではなく、特に自身の仕事をこなす能力に対して)、これから先、徐々にその力を携えて、自分に自信を持って、他人に対して委縮するようなことがなくなって、自分の想い通りに動くことができるようになれば、それはれっきとした「逆転勝ち」ではないだろうか。

 

win a losing game. 

 

逆転勝ちを手にするその瞬間のために、まだ動きを止めたままにはしたくない。その瞬間、ひとめぼれをしたあの時と同じように、剣のように鋭く時を刻んでいる、そんな時計であってほしい。