「お金から自由になろう」「お金にしばられるな」そういう言葉をいまはよく聞く。たいていそういうことは「お金をたくさん持っているであろう(稼いでいるように見える)」人が言うものだから、これまであまり真剣に受けてめていなかった。それができたら苦労はしない。たくさん稼いでいる人が言ったって説得力ないでしょう、というよいうに。
しかし、言っていることの意味は、分かる。「〇〇したいけれど、お金がないからできない」というのは、できない自分を慰める言い訳にすぎなくなっている。お金をそれほどかけずに食べること、移動すること、居住することは、いまは「他人と共有する」ことで簡単にできるようになった。また、お金をかけるのだけれど、自己資金ではなく他人に借りる、という選択肢も、クラウドファンディングによって可能になった。物的な担保を提供するのではなく、情熱を示して信用を得ることで他人にサポートしてもらうことが、いまではポピュラーな手法になった。お金が足りないという事実を免罪符にして、実行できない自分を甘やかすのはもうやめましょうよ、と言われたら、そうだよねと納得できる。
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「イワンの馬鹿」を読んで、「お金」の有無は生きていく上での豊かさとは無関係なのだろうということを改めて感じた。トルストイの名作を、アノニマ・スタジオの美しい装丁の本で味わう。絵本作家のハンス・フィッシャーによる挿画もきれい。お金そのものに絶対的な価値があるのではなくて、ある人にとっては不要なものになりうるのだということがよく分かる。お金の価値は、お金以外の価値あるものと交換することができることにこそある、ということが良くわかる。手にたこをつくって、自らの手でつくり出すことの尊さを、かみしめることができた気がした。