静寂

本を紹介することを通して、本を読むことの楽しさを他人と共有したい。そんな想いから、もし自分が本屋をやるとしたら、どんな名前が良いだろうか、と妄想する。

 

キーワードは「静寂」。このところ気になっているワードだ。「静寂」という名の本屋がもし街にあったらきっと、足音を抑えながら、扉を開けるだろう。

 

 

きっかけはLUNA SEAの10枚目のアルバム「CROSS」に収録されている「静寂」を聴いて衝撃を受けたことだ。本屋とは何の関係もないけれど、「静寂」という言葉が持つイメージの美しさと、「決して静かじゃないじゃないか」と突っ込みたくなる曲とタイトルの相違性に、うっとりとした。トロトロのバラードでないところに、彼らの「聴き手にとって一筋縄でいかない」ところが現れていて良い。何分の何拍子と表現したらいいのか。頭が混乱するような変拍子は、伊坂幸太郎小説を読んでいる時に感じる、頭の中で複雑に入り組んだストーリーを並び替えていくときのような興奮を思わせる。脳の中はむしろ静寂とは真逆で、ざわついている。

 

CROSS(通常盤)

CROSS(通常盤)

  • アーティスト:LUNA SEA
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: CD
 

  

 

これまでの自分の人生においてあまり意識していなかった「静寂な状態」。それを意識的に取り込むことが、自分にとって必要なのではないか。そう感じるようになったのは、「静寂とは」という本を読んでからだ。

 

静寂とは

静寂とは

 

 

「どこにいても静けさは見つけられる」静けさがないと環境のせいにするのではなく、自分の心がけ次第でいくらでも静かな状態に身を置くことができる。意識しなければ、静かな状態に身を置くことがまったくないまま過ごすことが簡単にできてしまう。だから、自ら主体的に「静寂」を取り込む工夫が必要だ。

 

静寂を取り込むことの大事さを、本から学んだ。これは言い換えると、本を読むという行為こそが、自分のうちに静寂を呼び込むことなのではないか。頭の中に雑念があって、イライラしたりしていたら、落ち着いて本を読むことはできない。その世界に没頭するには、その世界以外の情報を遮断すること、自らを静寂化させることが必要なのではないかと思った。

 

 

大好きな若松英輔が帯でコメントを書いている本を本屋で見つけ、思わず手に取った。「幸せに気づく世界のことば」人を癒すこともあれば、時として人を傷つけるナイフにもなる、そんな「言葉」だからこそ、大切に、慎重に選びながら使えるようでありたい。そして、使う以上は、使う自分も、それを聞く他人も、幸せに気づけるようでありたい。

 

幸せに気づく世界のことば

幸せに気づく世界のことば

 

 

そのなかに「静寂」という言葉があって、ぎょっとした。外からの余計な音、景色などをシャットアウトして、自分の心の中に余白を持たせること、それが静寂だと自分なりに解釈する。いずれ形を変えるもの、壊れるもの、簡素なものをそのまま美しいと認める精神、その「詫び寂び」の字を含む「静寂」。本当に美しい言葉なのだという確信に変わった。

 

 

本に寄せるイメージ。読書を経て到達したい境地。それを端的に表現する言葉が「静寂」だと思った。