エッセイに詰まっている「本当」

その人が書いたエッセイを読むこと以上に、その人の「本当」を知る術を知らない。エッセイには、書いた人の正直な気持ちが現れているから。カリスマ書店員の新井見枝香さんの本だっただろうか。エッセイにはその著者の「本当」が凝縮されていると言っていた。だとしたら、自分がエッセイを読みたいと思う動機は、そこにあるのかもしれない。

 

エッセイに著者の「本当」が詰まっていて、著者の「本当」に触れる最適かつ唯一の方法がエッセイを読むことなのだとしたら。自分はエッセイを読んで、その著者の考えることに共感して、「そうか、この人と同じことを自分も思っているんだから、自分はとりたてて変なのではない。もっと自分に自信をもっていいんじゃないか」という気持ちになりたいのではないか。著者の内面に自分の内面と近い点をなんとかして見つけ出して、そう考えるのは自分だけじゃないんだと安心したいのかもしれない。

 

大学時代に熱中したASIAN KANG-FU GENERATIONの後藤正文。死の危機を乗り越えた人生訓を聞いてファンになった星野源。しゃべることの節々に聡明さを感じるオードリーの若林正恭。歴史好きだということを昔知ってちょっと惹かれた女優の酒井若菜。そして昔から大好きな元お茶大教授の土屋賢二。彼ら、彼女らの本当が詰まっているエッセイを読みながら、そういう考え方もあるのかと時には驚き、そうそう俺も、と時には同調する。そうやって、自分の「本当」と他人の「本当」の間にある相違点や類似点を探しては、まだまだ自分は大丈夫、と慰める時間が、自分にとって必要なんだ。

 

何度でもオールライトと歌え

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  • 作者:後藤正文
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

よみがえる変態 (文春文庫)

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  • 作者:源, 星野
  • 発売日: 2019/09/03
  • メディア: 文庫
 

  

ナナメの夕暮れ (文春e-book)

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  • 作者:若林 正恭
  • 発売日: 2018/08/30
  • メディア: Kindle版
 

  

うたかたのエッセイ集

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  • 作者:酒井若菜
  • 発売日: 2018/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  

紅茶を注文する方法 (文春文庫)

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  • 作者:土屋賢二
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Kindle版
 

  

探してるものはそう遠くはないのかもしれない

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