渋滞を避けようと意識しながら生活しているつもりだけど、なかなか避けられない。第一に、渋滞にもいろいろな種類がある。第二に、他人も同じように渋滞を避けようと意識していることが多いため、結果として渋滞にぶつかることになる。
第一については、「渋滞学」と学問化して研究している教授もいることからよく分かる。
東京大学の教授である著者は、「渋滞学」の第一人者。道路上の車の渋滞にとどまらず、スーパーのレジや人気のラーメン店に行列をつくるのも渋滞だし、インターネットの特定のサイトにアクセスが集中して接続が悪くなるのも渋滞。血液の渋滞は高血圧につながるし、売れない商品が渋滞すると在庫が倉庫にたまってしまう。このように日常生活のあらゆる場面で渋滞は登場していて、これらの渋滞を避けてスムーズに生活するのは不可能に近い。
第二については、「考えることはみんな同じ」で、例えば高速道路が渋滞してるから一般道の方が早いと思って高速を下りたら、一般道も同じように混んでいて、結局信号のない高速の方がノロノロであっても早く目的地に着くことが多いのがその例だ。
趣味で集めている腕時計の電池がなくなってしばらくたったため、それらの電池交換を目的に、近くのショッピングモールへ行った。そこは自宅から車で10分も走れば着く距離で、便利な遊び場と考えていたが、日曜日の昼間であることを甘く見ていた自分が悪かった。目的地の少し手前で、交差点で右折しなければならない車が列をなしていた。前から来る車もそのショッピングモールへ行くために左折するのがほとんどで、行き先からの渋滞が交差点まで達し、赤信号になって強引に右折するものの交差点を脱しきれない。こんだけ混雑するショッピングモールの手前の交差点なんだから、せめて右折信号をつけてくれよ、と前々から思っているのだが、市川市は何をためらっているのか?(行き先からの渋滞が交差点まで達していたら、右折信号があってもあまり意味ないが)
通常の倍ちかい時間をかけてようやく駐車場に車を停めて中に入るが、日曜日の昼間だけあって店内はいっぱい。目的の電池交換を待つ間、本屋でテキトーに時間をつぶす。だいたいは買う目的もなく入るのだが、何かしら買ってしまうのが最近の悪い癖。自らを貧相だという謙虚さを持つお茶大の教授で、大好きな作家でもあるツチヤ氏の文庫本を手に取り、その表紙のツチヤ氏の高貴なルックスにビビビときて、思わずレジに向かった。まさに教授の思うツボだ。
なんの栄養にもならないが、決して毒にもならない。ぼくにとっては何も考えずに脱力して読める本。学生や助手、編集者との会話系はあいかわらず秀逸。電車内で読もうもんなら思わずクスクス笑ってしまい、周りから頭がおかしい人だと思われてしまう麻薬のような本。まだ読んでる途中だけど、こういうオモシロエッセイが自分も書けたらいいな、といつも思う。
そんなことを考えながらショッピングモールを歩きながら、ふと考えた。ぼくが渋滞の末このショッピングモールの駐車場にようやくたどり着いたの同じように、いまここに車で向かっている人たちのことを。たしかぼくが駐車場に入った時、ほとんど満車に近い状態だった。そしてそれから1時間以上が経過している。あれからもきっとひっきりなしに車が入ってきているだろう。だけど、それと同じだけの量、帰る車があるのかと思うと、どう考えてもなさそうな気がする。滞在時間は人それぞれだけど、10分や20分で帰る人がいるとは考えにくい。だから自分が入ってきたときの状況を考えると、出る車より入る車の方が明らかに多い気がする。するとどんなことが起こるだろう・・・
いま行列の最後尾についたときの待ち時間(分)は、
(行列の総人数)÷(1分間に自分の後ろについた人の数)
という簡単な式によって計算することができるという。ただしこの式は、並ぶ人と同じだけ出る人がいるという仮定があって初めて成り立つ。今回のように、出る車の方が少ないようだったら、入る車が多くなって渋滞はどんどん長くなる。それがあの交差点をつぶし、信号が意味をなさなくなってしまうのも時間の問題ではないか?きっと今あの交差点はカオスになっているのではないか?それとも、前述の式の仮定のように、入る車と同じだけ帰る車もあるってことか??そんなことを考えながら、スイスイとショッピングモールを後にした。
「どうすれば渋滞を避けられるか?」を考えるより、「どうすれば渋滞にハマったときの不快指数を減らすことができるか」を考えたい。車を運転するうえで実際に渋滞を緩和できる心がけは、車間距離を大きくとることだという。これは科学的にも説明がつく。前の車がブレーキを踏んでも、自分の車のブレーキを車間距離が吸収してくれるからだ。そういう誰でも簡単にできることを実践したうえで、いちいち渋滞にイライラしない広い心を持つこと(例えばカーステで好きな曲を流してテンションをあげるとか)や、時間に余裕をもって出発するなど、できることはいくらでもある。あたりまえのかもしれないけど、そんなことから実践してみよう。