街のそば屋さん

月に2回ほど、妙典に行く。数年前まで住んでいた場所に、いまは仕事で訪れるだけだけれど、行くたびに都内と違った柔らかい空気に、心が和む。空気が肩にのしかかる、その気圧が低くて身軽になる感じ、と言ったら大げさだろうか。ただ精神的な開放感は都内にいる時と全然違うと思う。

 

妙典に行って時はここ、と最近は決めているそば屋があって、今日もそこで昼ご飯を食べた。ざるそばと天丼のミニセット。いつも何を食べようか直前まで悩みに悩む。結局今日はベタで、バランスの取れたものを選んでしまった。

 

なんで妙典に住んでいる時にもっと食べに来なかったのだろう、と後悔している。昔はずっと街のそば屋は敷居が高いと思っていた。ガラガラ、と扉を開けたら常連さんがにらんできて、居心地が悪い感じ。相席ばかりで落ち着けない感じ。そんな偏見を持ち続けていた自分が恥ずかしい。

 

当時通えなかった、罪滅ぼしと言っては変だけれど、いまはこの素朴なそばを定期的に食べに行っている。おばあちゃんに「いつもありがとねえ」と言われるまでになり、内心大喜びだ。すべてのメニューを食べることが目標、と一瞬心に浮かび、いやいや、そうすると目標達成のために何年通うことになるのだろうか、と気が遠くなった。それくらいメニューが多いのも、街のそば屋さんの醍醐味だ。