剣道部の稽古の思い出

日課のジョギングをしながら、高校時代、よく暑い日も休まず部活動を続けることができたなぁ、と振り返る。

 

剣道部に所属していた。うだるような暑さの中、道場に入って道着に着替え、防具をつける。面をかぶったら、もうサウナの中にいるようなものだ。それでも、あたかもそれが当たり前であるかのように稽古をすることができたのは、高校時代の自分の身体が、「日々運動をすることに慣れた身体」であったからだと思っている。その証拠に、部活動を引退したあとの学校行事である駅伝大会では、1年・2年生の時のような力を発揮することができず、ゼイゼイハアハア言いながらようやく走り切ったくらいだった。運動を習慣にしていないとすぐに体力が落ちるということを、身をもって思い知った。

 

毎日稽古をしていたあの頃は、多少暑さがきびしくてもなんとかなったし、稽古後に自販機に駆け込んでジュースを買い(その時のお気に入りは500ml缶のファンタグレープだった)、がぶ飲みすれば疲れも吹っ飛んだ。レギュラーになれなかった自分の劣等感を、毎朝早く起きて自宅の庭で素振りをし、稽古にも臨むという自分の真面目さに酔うことでなんとか相殺していた。もしも「タイムマシンであの頃に戻って稽古できるけれどどう?」と誘われることがあっても断るけれど、毎日欠かさず稽古をすることで心身を鍛えていた点で、その時の経験を誇りに思っている。

 

その時と今とでは8月の気温も変わっているだろう。連日、今日も35度を超えるという予報が続いたことをほとんど覚えていない。そもそも「猛暑日(35度以上の日のこと)」という言葉が当時あっただろうか。だから「当時と今とでは状況が違う」。昔は休まず部活をやったのだからと言って、今の子どもたちに「休まず練習せよ」なんて言えるわけがない。現に熱中症で死者が出ている。しかし、水を飲んで、適度に休んで、倒れない範囲内という前提で、自分の身体を痛めつけて鍛える、その快感を奪うこともまた、教育の現場であってはならない、とも思う。そのさじ加減は本当に難しい。加減を誤ったら命に影響するのだから。

 

もうちょっと暗くなってから走った方が安全では?とも思ったけれど、思い切って日が暮れる前に家を出て、汗を流した。危険と隣り合わせであることは理解しつつ、暑さに立ち向かって身体を痛めつけるのが、思いがけず快感だったりするのだ。