目力

12月7日。土曜日。

 

夕方まで仕事。帰りがけ、いつもの美容院へ。この時間に入ることはほとんどない。たいていは日曜の昼間。行きつけの場所に、いつもと違う時間に行ってみる。そこに新鮮さを見出したい気分だったんだ。

 

それは悪い方にもはたらいた。一日の終わりに訪れる快適空間は、それは居心地よく、とにかく眠い。いつもなら楽しいマスターとの会話も、眠気が邪魔して弾まない。「安藤さん、目力ありますよね」ちょいちょい言われるその言葉と一緒に、「眉毛がくっきりしてる。マツジュンみたいに」だって。褒められてわずかに眠気がさめたけど、その程度。「たまには違うことを」が裏目に出ることもある。

 

鏡の隣のテレビでTHE YELLOW MONKEYのPV特集をやっていて、「追憶のマーメイド」を久々に聴いた。「懐かしいですね」とつぶやくスタッフに「ぼく、イエローモンキー大好きなんです」と自慢する。それを知ってるマスターが「おっ、今日はグッドタイミングだね、特集なんだ」と絡んでくる。ちょうど散髪が終わったタイミングで「JAM」が流れ始め、席を立てないのを汲み取ったのか、スタッフが「耳清掃しますか?」。最後まで「JAM」を聴きたかった、ただそれだけの理由で、追加オーダーに乗ってしまった。「カラオケでこれを歌うときは泣きながら。中途半端な気持ちではマイクは握らない」言ったらマスターに大笑いされた。

 

ぼく以上に目力のある看板猫に見送られ、店を出る。「来年もどうぞよろしく」そう言われて、12月であることに改めて気づく。今年、果たして自分は成長しただろうか。残り1ヶ月を、どう過ごそうか。そうだ、来週LUNA SEAの13年ぶりのアルバムを買って、年の瀬を酔って過ごすんだ。自然と目力も強くなる。