期待しすぎないこと

「他人を信用する」言葉で言うのは簡単だけれど、実際に行動で示すのは思いのほか難しい。何が言いたいのか、考えれば考えるほどこんがらがってくるのだけれど、例えば何か一緒に仕事をしている相手に対して、過度な期待をすると、それが裏切られたときのショックが大きくて、イライラしたり、傷ついたりする。自分自身そんなに完璧にできるわけではないのに、自分のことは棚にあげて、相手には完璧を求めてしまう傾向にある。そのことに最近、気がついた。

 

特に仕事において、心の平穏を保ち、穏やかに、しかし粛々と動くために、必要なコツみたいなものがあるとしたら、それは「期待しすぎない」ということだろうと思っている。「基本的に他人は信用しない」ちょっと断定的で突き放したようなニュアンスの言葉になるけれど、こう言い替えても良い。相手の行動は自分の期待を常に下回る。そう思っていれば、本当に下回ったときには「やっぱりな。そうだよな」と受け止めることができるし、そうでない、予想外の結果が来たら、「お、奇跡が起きた!」なんて喜ぶこともできる。そうやって他人のハードルを下げることを、最近特に意識するようになった。具体的なことは言わないが、「なんだかなぁ」と思うことが多く、そのことにチマチマと悩んでいる自分がばかばかしく感じたことも、そう意識するようになった一因だ。

 

自分が他人に迷惑をかけないように気をつけて行動する。それは大前提。「別に迷惑かけたっていいんだよ。誰だって他人に迷惑をかけながら生きていくんだ」と開き直る大人はサイテーだ。そうではなく、自分の他人への行いに注意したうえで、他人から迷惑を受けたと感じた時には寛容に受け止めることが大事。他人の行動に対しては「それでいいよ。自分さえ許せばコトは進むんだから」とつぶやいておしまいにする。受け止めるというよりは、受け流すと言った方がよいのかもしれない。とげのある攻撃的なものを、受け止めて傷つくのではなく、触れつつもかわす。合気道をイメージすると分かりやすい。

 

そのことを意識し始めてから、仕事がより楽しくなったように感じる。相変わらず他人の、だらしなさというか、不真面目さというか、そうしたふるまいに腹をたてることもあるけれど、「まぁ相手も忙しいのだろうし」くらいに軽く捉えられれば、さっと先に進むことができる。だいたい、自分だって今までたくさんの人を困らせ、落胆させ、怒らせてきたに違いないのだ。仕事が滞るのは仕方ないとして、ではどうすれば先に進むか、その前進のための方法を検討することに集中する。これが、なるべくイライラしないで仕事をする秘訣かな。