裏の沼での思い出

昨日、少しだけ帰省して家族と話をしている中で、子供の頃のちょっと苦い出来事を思い出した。犬の散歩をしようと家族と家を出て、裏の沼の前を通った時に、その時の風景が目の前に広がった。

 

小学生のとき。家の裏にある小さな沼で、友達と釣りをしていた。当時その沼にはブラックバスがいたので、ルアーフィッシングの釣り具を買い、釣りを楽しんでいた。

 

友達が釣りに興じているそのすぐ後ろで、私はかがんで彼のルアーのボックスか何かを眺めていたのだろう。目の前で竿を振った彼のルアーが、私のまぶたに、ぶつかった。針が返しごとまぶたに刺さり、抜けなくなった。

 

眼球をやられなかったことに安心したのもつかの間、なかなかまぶたから取れない針に焦り、すぐに家に駆けこんだ。覚えているのは、うろたえた母がおもむろに日本酒をまぶたに塗り、針を取ろうとしたことだ。それを私は今日まで、滑りを良くして針を抜くアナログな方法だったのだろうと思っていたけれど、「消毒的な理由じゃないの?」と家族に言われ、ああそうか、と我に返った。アルコールで針と皮膚との摩擦が少なくなるわけがないか。

 

今でこそ半分笑いながらそんなエピソードを振り返ることができるけれど、もしルアーが数センチずれていて、失明していたらと思うとぞっとする。子どもの頃の遊びには、予期せぬところに危険が潜んでいるということを、大人になってから実感した。子を持つ親が、のびのび遊ばせたいと思う反面、危ない目にあったらどうしよう、と常にハラハラしながら子を遊びに送り出しているのだと思うと、泣けてくる。