気持ちの余裕

いつもの美容院。鏡の脇にモニターがあって、いつもABEMATVが流れている。貫禄あるアナウンサーのようにしゃべる柴田阿弥さんは、もはや元アイドルと言っても誰も分からないのかもしれない。

 

「日常のなかでつい『チッ』と思ってしまうことは?」という質問に、歩いていて目の前で青信号が点滅したときとか、駅のホームに着いた途端に電車のドアが閉まったときとか、そういった意見が挙がっていた。ほんのささいなことだし、ついイラっとするというのは分からなくはないけれど、最近私はこれらの出来事については『チッ』て思わなくなった。これは自然にそうなった、というよりは、そうした方が生活していて楽だよ、と自分に言い聞かせてそう思うようにした、と言った方が近い。意識的に気持ちに余裕を持たせたと言ってもいい。

 

朝、駅から事務所へ向かう途中。大通りをひたすら真っすぐ歩くので、比較的赤信号期間の長い交差点を渡ることも多い。そうすると信号にひっかからないことのほうがむしろまれで、必ずどこかで止まることになる。そして、これは歩くペースが関係しているのだろうけれど、ほぼ毎日、差し掛かる直前で信号の青が点滅する交差点があるのだ。

 

これにいちいち『チッ』て思っていたら、気持ち悪くて仕方ない。最近は、毎日必ず目の前で点滅する信号に逆に清々しさを感じ、「毎日ほぼ同じペースで歩いている自分ってすごいんじゃないか」なんて思ったりしている。ひとつの交差点で待って、青信号になって渡り始めれば、次の交差点は必ず青で止まることなく歩けるとか、そういった規則性のようなものも分かってくる。それがほぼ毎日同じなのが不思議であり、面白い。

 

駅で電車に乗る時も、イライラしなくなった。目の前でドアが閉まって行ってしまっても、せいぜい5分程度待てば次の電車が来る。朝はもともと早めに家を出ているし(そもそも乗る時間を決めて逆算して家を出ているし)、帰りだって、数分帰宅が遅れたところでたかがしれている。あわてない、あわてない。

 

それより私が他人よりついイライラしてしまう、自分ってホント器が小さいなぁ、と思うのは、例えばコンビニのレジとかATMとかで、自分の目の前で他のお客さんが何人か並んだことで待たなければならないとき。あと5秒自分の歩くスピードが速ければスムーズだったのに、と思う。なんだ、結局余裕ないんじないか、自分。