そば屋巡り

一つのお店を「行きつけ」と称して通い詰めるのではなく、浮気性の男のようにいろいろなお店に行っては、こっちはこれがおいしい、あっちにはこんな良いところがある、というように楽しむことを「〇〇巡り」という趣味と呼べるのであれば、自分にはいま、つい最近できた趣味がある。それが「そば屋巡り」だ。

 

昔からうどんが大好きで、むしろそばは苦手だった。コシのあるうどんと比べてボソボソしているイメージが強かった。だから家族でそば屋に行ってもうどんを注文していたし、大みそかは家族全員が年越しそばを食べる中自分はうどんを食べていた(祖母がそばと一緒に手打ちうどんを拵えてくれていた。いま思い出すと涙が出るくらいありがたい話だ)。そんな「そば嫌い」の自分がそばを好んで食べるようになったのは、割と最近のことだと思う。

 

自宅の近くに、おいしいそば屋さんがある。引っ越してきて、普段の食事に良い店はないかと探していて知ったお店だ。天せいろを食べることが多い。暖かいツユに入ったそばも好きだけれど、そのままのそばを、冷たいツユに少しづつつけながら食べるのが大好きだ。

 

しかしそば屋さんの本当の良いところ、飽きないところは、そのメニューの豊富さにある。ここでは天せいろ、と決めつけるのではなく、今日はじゃぁ鴨南蛮にしようかなとか、うどんにしてみようかなとか、ご飯ものに挑戦してみようかなとか、その日の気分でいろいろなものを食べることができるのが楽しい。

 

今日、散歩で隣駅近くまで歩いたついでに、そば屋さんに入った。初めて入るそのお店は店構えも良く、昔からやっているお店のような安心感もある。表に「牡蠣カレーうどん」とあって、たまにはこういうものもと思って、牡蠣カレーうどんと、あと玉子丼を注文した。とにかくおなかがすいていた。

 

やっぱりうどんもいいなぁとカレーをすする。久しぶりに食べた牡蠣もおいしい。昨日、美容院の帰りに寄ったそば屋では天ざるそばを食べたから、今日はうどんの気分だった。飽きないというのは、美味しく、何度も食べるために必要な要素だ。昔からラーメンは大好物だが、例えば好きな濃い味のラーメンを三日四日と連続で食べられますかと聞かれたら、いまは首を横に振る。夜ラーメンを食べたその翌日に体調を崩した数年前のことを思い出す。刺激に身を任せてがっつり食べて、それでも健康を維持できる身体ではなくなったということだ。