A:アルヴァ・アアルト -alvar aalto-

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私はこういうのを読むような人間です。そう他人に思ってほしくて、背のびして手にした本はたいてい、読み終わるのに時間がかかる。そもそも、読み始めるのに時間がかかる。世の積読の大半はこうした「自分を大きく見せたい」という欲望によるものなのだと思っている。でもそれは、良くないことだということではなく、そういうものだと諦めている。自分を誇示したい、そういう想いが蔵書をつくるのだ。きっと読めないだろうと手に取らないよりも、手元に「とりあえず」置いておいて、気になったときにすぐ参照できる状態にしておくこと、そのことに一定の意味があるのだと思うようにしている。

 

フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトの本もまた、好きな本屋で目にし、自分を鼓舞するようにレジに持って行ったものだ。ラフスケッチからは、彼の普段の脳内を垣間見れるようで面白い。この手の文章には難しい語彙が並んでいて、理解するのに時間がかかるのがたいていのことで、この本もそうなのだけれど、それでも少しづつ読むにつれ、彼の建築に対する姿勢があらわになってくる。

 

建築とは、事実上、人間のすべての活動領域を含む総合的な現象である。

 

人間の生活を正しく理解するなら、技術はただの補助手段であり、それ自体が決定的で独立した現象ではないことがわかる。技術の機能主義は本源的な建築をもたらさない。

 

徹底的に、人間の生活を包み込む総合的なものとして建築を捉えていたことが分かる。そうすると、スツールの脚も、ゴールデンベルの彫刻的なフォルムも、ヴィープリの図書館講義棟の波打つ天井も、その意図がまっすぐに自分に入り込んでくる。

 

特にスツール60のこれ以上ない質素で普遍的なデザインは、時間がたっても褪せないと思う。家具などのデザインについては、ヴィンテージものにこだわるよりは、いまの作家がデザインしたいまのプロダクトに注目したいと思っているけれど、スツール60(とあとヤコブセンのドットスツール、ハンス・コレーのランディチェア)は、自分にとっての普遍的なデザインの筆頭だと勝手に思っている。