見切り発車

なにごともまず形から入ろうとするのが、自分の悪い癖である。続けることが大事なのに、モチベーションを得ようと先に道具を買い揃える、とか。かつて東京マラソンにエントリーして当選し、練習に励んだ時もそうだった。走ることを続ける、その行動そのものが大事なのに、その練習プログラムをつくる前に、よさげなスニーカーを買って、それで半分満足してしまう。河川敷のジョギングコースを見つけて、ここを走れば気持ちも良さそうだ、と思っただけで終わり。肝心の練習は、週に一度、ちょびっと頑張る程度だった。それじゃぁ、満足のいく記録が出せるわけがない。

 

そうであってはよくないと思いながら、これからさらなる「形から」入る自分プロジェクトを企画中。壁面本棚をつくることだ。

 

構想は、しばらく前からあった。蔵書こそそんなに多くはないものの、これらの本を集める壁一面の本棚があったらかっこいいなぁ。だから、まず大容量の本棚からつくってしまおう。つくってしまって、その本棚にこれからどんどん本を置いていって、自分の世界をつくっていこう、と考えた。完全なる見切り発車だ。

 

本当に本が好きでよく読む人、本を大量に読むことが当たり前の人って、きっと本棚にはこだわらず、お金もかけないのではないかと思う。主役はあくまでも本であり、主役の本にお金をかけるべきであり、それを収容する箱にすぎない本棚にエネルギーを費やすべきではないということを、感覚的に知っているのだと思う。それでも自分は、本棚をつくることに労力を使いたい。「賃貸暮らしでいつ引っ越すか分からないのに、それにそんなに本があるわけでもないのに、なぜそんなものつくっちゃうの?モッタイナイ」と言われても、本棚づくりにお金を使いたい。それが、これから本を読むためのモチベーションになるような気がするから。

 

部屋に入ったら壁一面に本があって、それらが自分をつくっているのだと思ったら、気持ちが引き締まりそうで、嬉しくなりそう。そんな日を目指して。

 

家具屋さんについて。これは偶然なんだけれど、自宅の目の前で大家さんが定期的に企画しているギャラリーがあって、先日ある家具屋さんが出店していた。自分と年齢もさほど変わらない夫婦でやっている小さな家具屋さんのホームページを見て、シンプルですっきりした家具が自分の好みと合い、ギャラリーで直接話をしてその誠実そうな感じに安心した。そこで、頭の中で燻っていた壁面本棚への想いが湧き出てきて、ついにつくるための決心をした。その決心をさせてくれた出会いに、ただただ感謝するばかりである。

 

どんなものができるか、どんなものをつくるか、実はまだ固まっていない。あーしたいこーしたい、という想いばかりがふくらみ、なかなかすべての点において納得のいくモノができない。これから、ちょっと時間はかかるかもしれないが、自分だけの世界を形づくる最高の本棚を、つくっていきたい。