いまのものを使う

自分がなんとなく心のなかで感じていて、だけどうまく言葉に現わせていなかったものを、誰かが的確に言葉にしているのを見て、「そうそう、それそれ」と納得するということがよくある。

 

家具屋さんに壁面本棚をつくってもらったことがきっかけで、手づくりの無垢家具が好きになった。いわゆるブランドものではなく、それをつくっている人に惹かれて家具を手にしたという順序。だから、いわゆるメーカーの量産品にあまり興味をもたなくなった。

 

そしてそれは、古くからその価値を発信し続けて、いまもヴィンテージ品として流通しているデザイナーの家具にもあてはまる。普遍性があってカッコいいし、飽きずにずっと使えそうで好きなのだけれど、では自分がそれを買って使いたいかというと、どうしてもちょっと違う気がしてしまう。いまを生きる自分はいまの時代に生まれた家具を使いたい、と思う。いま家具をつくる家具屋さんは、過去の名作の良いところを吸収しながら、でも決してその真似ではなくて、いまの時代にあったプラスアルファをもたらしてくれるはずだ、と思う。そして、いまつくられている家具を手にすることで、いまの価値をつくっている作家さんを応援したいという気持ちもある。

 

そんな漠然とした想いを、どんぴしゃで言葉にしている本があったことに、気づいた。

 

「今の時代を生きているなら、今の時代のいちばん新しいもの、いちばん今の時代らしいものを使うほうがいい。それが今を生きるというライフスタイルだというのです」(P90)

 

アールトのスツール60も大好き。ヤコブセンのドットスツールも大好き。ポールケアホルムのPK22も大好き。ハンス・ウェグナーのGE290も大好き。ピエール・ガーリッシュのチューリップチェアも大好き。だけどそれらよりも、壁面本棚をつくってくれた家具屋さんのオリジナルチェア、スツールが大好きで、それを愛用したい。最近は本気でそう思っている。

 

しあわせを生む小さな種 今日のベリーグッド (PHP文庫)

しあわせを生む小さな種 今日のベリーグッド (PHP文庫)