自宅の本棚を整理する目的で、一度はダンボールに入れて捨てようと玄関に出しておいた本を、もう一度くらい読もうかと思い立ち、引っ張り出して、電車内で二度目を読み始める。そうか、これは以前、湯船に落としてしまったがためにブヨブヨになっちゃったから、古本屋に売ることができなかったのか、と思い出し、愛おしくなりながら、硬くなったページをめくる。首相暗殺の濡れ衣を着せれられた男が悪から逃げる、その迫力がすごい。途中、要所要所に入ってくる回想コーナーに、本編の進行を邪魔されているようで少しムッとすることもあるけれど、その回想にこそ、ストーリー進行上重要な出来事が待ち構えている。こうやってポツポツと伏線を張って、最後にそれが生かされるという手法、ほんとにすごいな、と思う。
事務所の先輩スタッフに「ジャイロスコープ」(※)を勧めたら、面白がってくれた。身近に伊坂幸太郎小説ファンがいて、嬉しかった。今日、ちょっと雑務をしに事務所に行ったら、彼も仕事をしていた。日曜日なのに。帰り際、読み返したことを振ってみる。
「いま、これ二度目読んでるんですよ、知ってます?」
「あぁっと、確か、読んでる。でもどういう話だっけ」
「首相暗殺の濡れ衣を着せられて逃げる、って話です」
「あぁ、それね。『魔王』と関連しているんだっけ?」
「関連はないですね。首相と戦う、という話ですけど」
「そうか。別の話と関連してるってのが、あったよね」
こうして、少しだけ盛り上がる。
「ゴールデンスランバー」はまだ読み途中だけれど、そうだ、これもあった、と、今度は「魔王」を、一度しまったダンボールから引っ張り出して、本棚へと戻す。次に二度目読みをするのはこれだ。これだから、本棚は、いつまでたっても片付かない。
(※)ジャイロスコープ
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