3652/ジャイロスコープ

先日、本棚を整理し、大量の本を手放したことがきっかけとなり、彼の小説からしばらく、距離を置いていた。とくにそういう意図があったわけではないが、たまたまその時別の本、エッセイに目移りしていて、結果として、離れていた。

 

彼の小説を原作として実写化される、というニュースを見た。あのストーリーをどうやって映像化するのだろう、文字を読みながら頭の中でスリリングな映像を自分勝手に思い描いた、あの映像が、はたしてスクリーンでどう映るのか、と、好奇心がわいた。その映画「グラスホッパー」の原作は、鈴木と鯨と蝉、それぞれの思惑が交錯する、殺し屋小説。殺し屋小説、と名付けるのも仰々しいが、そんなジャンルを、この小説で確立したのではないか、とも思う。

 

そんなわけで、彼、伊坂幸太郎さんの小説への熱が再燃した。本屋でまずは軽めのものを、と選んだエッセイが、また面白かった。なにかこう、一本筋の通った、太くて強いメッセージがあるわけではないのだけれど、じわっと心の奥底で何かが揺れるのを感じるような、そんな小説を作り上げる著者の、ありのままの人間性が垣間見れるようで、嬉しい。干支エッセイは、良いですね。

 

3652: 伊坂幸太郎エッセイ集 (新潮文庫)

3652: 伊坂幸太郎エッセイ集 (新潮文庫)

 

 

そしていまは、「ジャイロスコープ」を読んでる途中。読みやすい短編集。繋がってるようで、関連はないのか?でもひとつひとつの短い話の中に、じわっと、心の奥底を揺さぶる何かが、あるんだ。「こういう話なんだよ」と人に説明するのが難しい、というのは、相変わらずなのだけれど。まさにいま読了した「一人では無理がある」は、ひとりの男の間抜けさが世界(というとおおげさだけど)を救う、「期せずして勧善懲悪」の話。「if」もそう。この「救われた感」がとにかく心地よい。この心地よさがあるから、彼の小説を読みたいと思うんだ。

 

ジャイロスコープ (新潮文庫)

ジャイロスコープ (新潮文庫)