不要家族

不要家族 (文春文庫)

不要家族 (文春文庫)

 

お茶大教授で哲学者である著者の大爆笑エッセイ集も、ここまでくると特に大きな期待もなく、かつ飽き感もなく、フラットな気持ちで買って読むことができる。退官されていらっしゃったこと、これを読んで知った。35年という途方もない長い期間、哲学を教えるという、なにをもってゴールなのかがまったく分からない超巨大な迷路のような道を進んでこられた氏を、心から尊敬する。

 

書を読む限り、学生から尊敬されていない雰囲気が満載だが、絶対にそんな人じゃないと思う。エッセイを面白おかしくするための脚色というか手法なのであって、決して学生から蔑まれるような人じゃないはずだ。「ツチヤの貧格」(http://bibbidi-bobbidi-do.hatenablog.com/entries/2011/06/19)の表紙を見ればわかるように、そもそもご自身が自虐的におっしゃるような貧相な人でもない。ゴキブリのようにちょこまか動く、とか言う時があるけど、それは失礼すぎると思う。ゴキブリに対して。

 

時間を忘れるくらい没頭しちゃうような大爆笑、というほどではない。文章はフツーに多いし。でも、「こういう日常生活を切り取って面白おかしく描く」という行為に対して憧れの気持ちをもたせてくれる。しかも「とにかく面白おかしく書いて読者を爆笑の渦に巻き込もう」という欲が感じられず、あくまで自然で、正直な文章だと思う。・・・ということは著者はやっぱり貧相なのか??