幡ヶ谷のパン屋

管理組合運営のサポートをしているコーポラティブハウスが、渋谷区西原にある。最寄駅は京王線の幡ヶ谷駅。駅を降りて真っ先に意識が向かうのが、かっこいいコーポラでも、緑豊かな緑道でもなく、ドトールでもなく、ましてや大通り沿いの喧騒でもなく、駅前の小さなパン屋だったりする。

 

アルファベットだけでは読みづらい店名のこの店は、至って普通のパン屋で、ここにしかない個人店でもない。京王グループの会社が運営しているパン屋なのだということを、今日調べて初めて知った。

 

仕事で訪れることがほとんどであるこの街。コーポラに寄った帰りや寄る前の休憩、管理組合総会前の準備と、その用途はことのほか多い。シンプルなパンを食べながら、憧れていたコーポラティブハウスの仕事に携われているということを噛み締める、貴重な時間を過ごしている。

 

管理組合に快適を届ける仕事は、もちろんうまくいくことばかりではなく、時には入居者からキツイ言葉をもらったりして凹むこともある。もっと建築を勉強しなければ。勉強して、問題に対する解決法を自分の力で提示できるようにならない限りは、クライアントから信頼してもらえないではないか。といつも不安を感じながら、それでも専門書を開いて勉強に時間を割くという実行を伴わないのが、私のダメなところだ。どこかで、「自分には知識がなくたって、事務所の仲間に聞けばいいんだ」と甘えているんじゃないのか。

 

今日も、仕事があまりうまくいかないことの鬱憤を、甘いパンを食べることで晴らそうとした。ただ今日は、駅を降りてまっすぐ目的地へ向かったため、立ち寄らなかった。危ない危ない。仕事上の不安や危機感を、パンで帳消しにしようとするのがいけない。幡ヶ谷は、自分を現実逃避させようと誘惑してくる街だ。