二つになった器

確定申告書を書くために一日自宅にこもっていた。なかなか思うように進まずあわてる。結局ほぼ一日を費やしてしまった。早いタイミングでの着手が必要なのは、つまりそういうことなのだ。さぁ、と始めた時に、最も多くのエネルギーを必要とする。軌道に乗れば、あとはゴールまで流れるように進んでいく。そういうものなのだろう。

 

一段落はしたけれど、決して建設的ではなかったな。なんて思いながら食器を洗い、拭いていたら、落として割ってしまった。思えばこれまでにも、拭くときに手から滑り落ちそうでヒヤッとすることが多々あった。そしてとうとう放してしまった。床に敷いていたマットをわざとよけるようにして落ちた器は、フローリングにごん、とぶつかり、二つになった。その場所までマットがあれば、まあ落としたという事実は変わらないけれど、割れなかったかもしれない。

 

誰が言っていたのだったか。他人はよく「けががなくて良かった」とか「まぁそういうこともあるよ」と慰めてくれるけれど、結局は乱雑に扱った自分のせいだ、と。器に対する目に見えない態度が、落とすという結果となって現れたにすぎない。確かにこれは、ルーティンだからと、緊張感をもたずに手を動かしていた自分が悪い。

 

二つに割れた器は、もう元の姿には戻れない。こういうときはこれ以上つべこべ考えず、ルーティンといえど注意深く丁寧に手を動かすべし、という教訓が得られたのだと思うことにして、とっとと寝よう。