0から1をつくることとは別の立ち位置で

0を1にする仕事を。無から有をつくる仕事を。その言葉に突き動かされるように、仕事をしてきた。コーポラティブハウスを一番最初から企画することに憧れたのも、何もないところから住宅をつくりたいと思ったからだ。今もその気持ちは変わらないけれど、その関心は徐々に、竣工したコーポラティブハウスの管理組合運営補助に移った。ゼロから住宅をつくることよりも、住み始めてからの暮らしをずっと快適にしてもらうこと、そうすることで住宅の価値を100にも1,000にもしていくこと、そっちの方が自分の役割ではないかと思うようになった。そしてその対象は、住宅だけにとどまらない。モノづくりでもそうだ。私は何か価値のある「モノ」をつくれそうにないけれど、それを、そのモノが最も効果を発揮する形で使い倒し、そうすることで得られる「なんだか得した瞬間」を、発信することはできる。それによって誰かが共感してくれて、自分と同じようにモノを使ってくれる人が増えたら、0から1をつくることとは別の立ち位置で、暮らしを良くすることにつながると思う。せっかく生まれた1を、その後の使い方によって100、1,000へと成長させることができなかったり、逆に0に戻してしまったりするようなことは、したくない。