つづけるということ

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大好きなミシマ社の本で、「つづける」という言葉に刺激を感じ、手にとった。イタリアには、修行に励む日本人料理人がたくさんいるのだという。イタリアのレストランで修行する日本人が飽和状態。そんな状態で日本に戻ってきたシェフは、「イタリアで修行を積んだ」という経歴だけでは食べていけない。そんな厳しい状況の中、彼らはどうやって仕事を「つづけて」いるのか。「つづける」ためにどんなことを考えて、実行しているのか。

 

彼らがシェフを「つづけて」いけている理由は、つくることに対するポリシー、哲学にあるのだと思った。イタリアで修行して得た、単につくりかたという枠に留まらない現地のスピリットを、地元の料理に取り込む。東京で一旗あげようとするのではなく、地元で、地元の食材を使って、地元ならではの料理で還元する。生産する人と食べる人とをつなげる触媒になるという、料理を作るという枠を超えた発想を持つ。こういう「私はこう思う、だからこの場所で、こういう料理を、こうやってつくる」という哲学を持っているシェフは、強いのだと思う。自分が客の立場で考えても、確かに、食材にこだわっていて料理が出てくるとその食材を紹介してくれるとか、「今日はこの食材を仕入れたからこの料理がオススメ」といったことをSNSで発信しているとか、そういう特徴がある店は好きでまた行きたいと思うもの。

 

「つづける」ということ。その対象を「シェフ」から「仕事」に置き換えて考える。きっと自分が仕事をつづけるために大事なこと、考えるべきことは、こうやってシェフが試行錯誤しながら大事にしていること、考えていることと同じなんだと思う。

 

イタリア料理に限らず、外で料理を食べる時の、そのつくり手への見方が変わった一冊。