暮らしをつくる役割

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自由設計でつくった賃貸住宅に暮らしている。賃貸なので、自分の所有物だという感覚は当然ない。けれど、100%借り物だというこれまでの賃貸住宅ともまた少し感じ方が違って、自分が積極的に関与したことで生まれたのだという実感がある。間取りや内装材は、自分で決めたものであり、他の住戸とは全く違う。その「持ち家」と「賃貸」の中間的位置に立ったような感覚を得られたことが、今回の企画の最大の効果なのかもしれない。

 

昔は、住まいづくりと言ったら建築業界がその重要な役割を担うべきだと思っていた。住まい手のライフスタイルに応じた住宅を設計し、つくり、引き渡す。それが住まい手の暮らしの質を高めるために最も有効な手段だと。

 

しかしいまはそんなことはなく、住宅以外にも暮らしを快適にする方法はたくさんあると思っている。それは部屋に置く家具かもしれないし、食器かもしれないし、日常的に使う道具かもしれない。住む場所を選べば、家自体はこだわらなくて良いという考え方だってある。もっと小さなものに目を向けると、読む本で暮らしは変わるし、口にする料理でもお米でもお茶でもコーヒーでも、なんだって良い。「あぁ、いま自分、快適だなぁ」と思えるための方法って、身近にたくさんある。なんだっていいや、じゃなくて、それらを自分で積極的に選ぶことが大事だ。

 

・・・なんてことをいま、文字を書きながら考えている。愛猫は、キッチンボードの天板の上で寝ている。ここがお気に入りらしい。引っ越してくるにあたって、家具屋さんにつくってもらった特注家具だ。ケージでもなく、床でもなく、階段でもなく、家具の上を居場所として好む者もいる。暮らしを良くするという役割は、箱たる家そのものだけでなく、そこに置いただけのものにも、ある。