グラスホッパー

8月1日。日曜日。

ここんとこ、小説にはまってます。

本を読む機会がだんだん増えてきたとはいえ、ビジネス書ばかりだったので、正直つまらなかったというのもある。

ホントのきっかけは小飼弾著「空気を読むな、本を読め」。

以下抜粋。

「本を読むということは『〜しなければならない』という仕事のような義務でもなんでもない。『〜できればいい』というたぐいの『遊び』のひとつであり、快楽でもあります」

「本は遊びにも仕事にも役立つけれど、『読まなければならない』『何かを学び取らなければいけない』という義務感から読んでも、その本の内容は自分の血肉とはならないものなのです」

これらから、仕事に直結する本ばかり読むのはやめよう、もっというと、読みたい本を読んで、その内容をむりやり仕事でネタにしよう、と思い、小説を読むようになりました。


で、村上春樹の「1Q84」を読んで、『二人の主人公のそれぞれの目線でのストーリーが同時展開していって、だんだんシンクロしていく』ってのが面白いなぁと思っていると、同じような手法の小説に出会えたので、読んでみました。

こういう手法は、Aの話が途中で終わってBの話に移り、またAの話にもどる、という流れなので、「いいところで移るなぁ」とか「あれ、Aの話は前回どこで終わってたっけ?」とか考えなきゃならない部分もあるけど、ひとつの事象を複数人の視点で見られるという点が面白い。


前置きはさておき、最近大好きな小説家の本を紹介します。

伊坂幸太郎「グラスホッパー」 角川文庫


1.元教師の鈴木は、ある会社に社員として潜入する。すべては社長のバカ息子・寺原に殺された妻の復讐のために。しかし、鈴木の目の前で、寺原が突然車道に飛び込み、車に轢かれる。そのとき鈴木は、寺原を背後から押して逃げる人影を見ていた。復讐の機会を奪われた鈴木は、その人影を追う。
2.自殺専門の殺し屋「鯨」。彼は議員・梶の依頼で、梶の汚名を晴らすために秘書を自殺させる。鯨は突然めまいに襲われ、かつて自殺に追い込んできた人たちが現れる幻覚に悩まされていた。仕事を終えた鯨がホテルから出る直前、男が車に轢かれる瞬間を目撃する。「押し屋だ」鯨はつぶやく。鯨にはかつて、自殺させるのに失敗し、その後押し屋に殺しを横取りされた過去があった。
3.ナイフ使いの若者「蝉」。一仕事終えた蝉のところに、再び殺しの依頼が来る。それはある議員からで、秘書を自殺させた男をホテルで殺して欲しい、というのだ。蝉はその仕事の約束の場所に向かう途中、「押し屋」を探して人を脅している二人組に会う。「面白そうじゃねぇか、その『押し屋』を俺が殺せばいいんだな?」。



「鈴木」「鯨」「蝉」。三人がそれぞれの経緯で、「押し屋」を探し始める。そんな話です。
一見無関係の三人が、「押し屋」によって繋がっていく様は、読んでいて爽快です。
特に興奮するのが、鯨対蝉。
殺し屋同士の戦いなんてそうあるもんじゃないから、ドキドキしながら読みました。
伊坂氏は、この本で「殺し屋小説」という新しい分野を開拓できたんじゃないかな。

大男「鯨」と口うるさい若者「蝉」。それぞれのキャラも対立していて似つかない関係だから、それも面白さに繋がってるのではないでしょうか。

「鈴木」「鯨」「蝉」という文字の判子が交互にでてきてそれぞれの視点での話に移る。それがとにかく異質で面白いと思った。