自分だけが知っている

4月から仕事場が駿河台に変わる。大学時代、何度か画材を買いに檸檬画翠に行ったのを思い出す。自分にとって、知が詰まっている街だ。

 

新しい街が拠点になると、その近くで自分なりの居場所と呼べるような場所を探したくなる。それはきっと、自分だけではないだろう。賑やかで、何でも揃っているであろうこの街で、自分だけがその価値を分かっているのだ、と胸を張って言える場所を見つけたい。そして他人に言いたい。オレのお気に入りの場所はここなんだ、と。

 

蕎麦屋なのか、喫茶店なのか、本屋なのか、ファストフードの店なのか、それは分からない。ただ一つ、大切なのは、誰もがその価値を知っていて、すでにたくさんの人が集っている人気の場所ではないこと。「自分だけが」というのがキーワードだと思っている。実際には、自分だけがというわけにはいかないし(そんなお店があったらすぐつぶれてしまう)、自分が行かなければ成り立たないお店がもしあったら、それはそれで重荷になって行きづらい。ただ、それがわがままであることは承知のうえで、そんな絶妙な距離感で触れることのできる場所を、見つけ出したいのだ。