雨とホキ美術館

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16:00

 

いままで美術館というものにあまり縁がなかった。美術館巡りで美とは何かを知ることも必要だろうと思い、そして、千葉県民でありながら行ったことがなかったことに急に恥ずかしさを感じ、急に思い立って、ホキ美術館へ行ってきた。昼過ぎに雨が降ってきて、やっぱやめようか、来週行けばいいんだ、なんて思ったけれど、すぐやんだし、雨に濡れたコンクリート打ち放し建築を観るのも良いのではないかと思い、行くことにした。

 

長く細い曲線状の道を歩きながら、美しい写実画を味わう。写実画専門の美術館だけあって、風景の持つ自然の壮大な力、被写体の人の目力といったものが、リアルに伝わってくる。展示されている絵に一点集中できるような展示空間が、心地よかった。

 

写実画に興味をもつきっかけになった。そして、美術館は、一度行って観たからもうおしまい、じゃなくて、何度か行って複数回観ることで、同じ絵でもまた違った楽しみ方ができるのではないか、と思った。美しいものを見る回数を増やせば、センスが磨けてオトナの男に近づけるか。

 

11:30

 

日頃の不摂生が気になっていた。たまにでもいいから走らなければならないと思い、久しぶりに河川敷をジョギングした。雲行きは怪しかったけれどまだ雨が降る前で、涼しいくらいで、走るのには快適だった。

 

ちょっとサボるとすぐバテてしまう。自分でもびっくりするくらいゆっくりしか走れなかったが、走っている間はいろんなことを考えることができる。貴重な時間だ。河川敷でアウトドアを楽しむ人たちを見てうらやましがったり、ホキ美術館、どんな絵があるんだろうなぁ、楽しめるかなぁ、なんてちょっと不安になったり、仕事がうまくいかないけれど、どうしたらいいかなぁ、なんて漠然と悩んだり。いろんなことが頭に浮かんでは消える。後で振り返るとさほど建設的でない気もするけれど、走っている間はとにかく心地よい。こうやって汗と一緒に老廃物を出して身も心もリフレッシュしたら、体調管理をきちんとできる、オトナの男に一歩近づけるか。

 

9:30

 

自分の住む街での自分の居場所と思えるカフェに出会い、朝食をとりに立ち寄る。ここにはオープン日から通っている。とはいえ平日は基本行けないから、休日限定。行こうと意気込んでいくというより、特になにがなくてもフラッと立ち寄ってそこでの時間を楽しむ、といったことが、この先できたらいいなと思っている。

 

店主は私より年下の女性。女の子、といったら失礼だと思うくらいしっかりしていて、テキパキしていて、夢を実現させるためのみなぎるパワーを持っている。それでいて、めちゃめちゃかわいい。そして、つくるコーヒーがとてもうまい。私にとって特別な存在のカフェだ。「昨日は暑かったけれど、今日は涼しいくらいですね」そんな何でもない会話も、気兼ねなく楽しめる。

 

しばらくすると、徐々に混んできてほぼ満席になった。今日はホキ美術館に行かなきゃだし、その前にジョギングもしなきゃだし、長居するのもマズいから帰ろうかと思い始めたころ。忙しさにテンパるのではなく、逆に楽しそうに見えるのが、彼女のすごいところ。忙しくなるほど余裕がなくなり、機嫌が悪くなり、慌てふためいてしまう自分とは雲泥の差だ。「すごいですね」素直に思ったことを伝えると、「いやいや、逆にお客様とゆっくりしゃべれなくなるからつらいんですけどね」と謙遜する。すごすぎる。心から尊敬する。

 

彼女の姿を見ていれば、私ももっと仕事に余裕をもち、楽しみながら(楽しい部分を見つけながら)、パワフルに動くことができるだろうか。キャパシティを超えることがあっても不機嫌にならず、サクサクさばいていけるオトナになれるだろうか。