家族狩り

人から勧められた本は読まない、面白く読めるとは限らないから。そういう考え方もあると思うし、以前は自分もどちらかというとそういうふうに思っていた。だけどいまは、とりあえず読んでみよう、それで面白かったら、面白かったよ、という新しい会話が生まれるだろう、と思う。そこから始まる人との関係も、あるだろう。

 

たまに行くガレット屋さんの店員さんに教えてもらった。人間の、嫌な部分を見るようで、暗い気持ちというか、重い気持ちになるんですけど、それがいいんですよね。そう言って、決して勧めはしません、と前置きされつつ、紹介された。それは、読まないわけにはいかんでしょう。読んで、とことん暗い気持ちになって、とことん落ち込みたい。そして、次に店員さんにあったときは、「『オススメはしない』という言葉に触発されて、読んでみたよ。すっごい落ち込んだよ。確かに、読まないほうが良かったかもしれないよ。でも、おかげで落ちるところまで落ちることができたよ。紹介してくれてありがとう」と言おう。

 

幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)

幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)