8月12日。木曜日。
ぼくの心を揺さぶってくれる夏の日がやってきた。
今年はブルーマン。
前回行くことができずにツアー終了、「あぁ、結局見逃してしまった・・・」と後悔していたのもつかの間、追加公演の知らせを聞き、また胸が躍った。
六本木はブルーマンシアターへ。
ここはブルーマンの公演のために設計されたという特別な砦。
六本木駅を降りて、実在する芋洗坂を下り、シアターへ入る。
少し高台になっている建物に入るための、鉄骨むき出しの階段が、綺麗で都心的で立派な建物を想像していた僕を少し落胆させる。
しかし、階段を登り、目の前にそびえていたのは、ブルーマンの名にふさわしい、青い砦。
チケットを渡し、中に入ると、質素なホールに売店、そして目の前にはもうシアターが。
初ブルーマンということで、奮発してポンチョシートを購入、見たら2列目、舞台の目の前だった。
「ポンチョシートの皆様、公演中、『なにかが』飛んできますので、しっかりとお手元のポンチョを着用ください」
そんなアナウンスに笑いつつ、ポンチョ(というかビニルガッパ)を着る。
暗転。
いつも思う。
この開演直前の照明が暗転した瞬間の興奮、これがたまらない。
こういうときのぼくの顔や、公演中のぼくが奇声を発してる姿は、だれにも見られくない。
だから一人で行くのがいい。
このことを友達に言うとびっくりされるが。
そして開演。
見慣れた3人のシルエットが暗闇に浮かぶ。
叩いてるのは、ダクト。
飛び散る蛍光塗料。
観客を沸かせるパフォーマンス。
口に含んだ塗料を回したキャンバスに吹きかける。
不規則に塗料が飛び散ったキャンバス。
それをするのが彼だというだけで、そのキャンバスが芸術作品に見えるから不思議だ。
がむしゃらにダクトを叩く。
舞台に輝く色とりどりのダクト。
そのミスマッチさには決して違和感はない。
ダクトの長さの調節で音程を自在に操り、曲をつくってしまう。
彼らの発想に脱帽した。
興奮あり、考えさせれられるところもあり、のノンストップの90分。
これをほぼ毎日、12月まで続ける彼らの体力に、いらぬ心配をかけてしまった。
彼の胸元のチューブから突如飛び散ったバナナ(!)がぼくをめがけて飛んできた。
半そでのポンチョをよけて腕に直撃した液状バナナ。
バナナ臭を漂わせながら会場をあとにしたのも、今となってはいい思い出です・・・
特別ゲストとして来ていた林家ペーパー夫妻。
なんでも、明日はパー子さんの誕生日だそう。
いつもどおりの目が覚めるような服装で手を振っている。
「ブルーマンなのになんでピンクなんだよ」とか、「もうすでに蛍光塗料浴びてきたのかよ」とか、いろいろ突っ込みたくなったが、我慢する。
最後にペーパーと観客全員で記念撮影をし、幕を閉じた。
考察。
・ただパフォーマンスで観客を沸かせるだけでなく、ときには観客を巻き込んで面白いことを挟み込む。
・蛍光塗料やポップコーン、バナナなど、様々なものをこれでもかというほど飛び散らせ、ポンチョ席のみんなを興奮させる。
・インターネットを代表とするインフラにまつわる問題に切り込み、考えさせることも忘れない。
・そして、彼らは最初から最後まで、決して口を聞かない。あの青い顔に目をギョロつかせ、無表情でひたすらダクトを叩く。
そんな、他にないキャラクターで一つの舞台を作り上げる唯一無二の存在に、心から痺れた。