拡散

1月28日。土曜日。



特に何をするでもなく、毎週必ず訪れるはずの週末を「やっと休みだ」と言いながらぐうたらするあたり、もう末期症状だ。「やっと休みだ」と思うってことは仕事が嫌だってことじゃないのか?本来仕事ってそういう位置にあるものじゃないんじゃないのか?「いやぁ〜土日で会社は休みだよぉ。会社行って誰もいないのつまんないよぉ〜♪でも仕事はしたいしなぁ〜♪」一度でいいからそういう贅沢な悩みを抱えてみたいものだが、一方で「仕事は仕事。あくまで飯を食うための手段。その手段によって得たお金で最高に楽しく遊ぶことが人生の意義だ」そんな外国人的考え方もあるようで、人にとっての仕事の位置づけはそう簡単なものではなさそう。ぼくはどちらかというと、仕事は仕事、プライベートはプライベート、と明確に分けるのではなく、遊びの延長線上に仕事があってもいいと思っているので、別に休日の自宅に仕事を持ち込むことに関して違和感はないし、休日に物件の現地調査に行くことについてもあんまり躊躇はない。ぐうたらしてるよりはよほど建設的な休日の過ごし方だと思う。だから、本当は金曜日の夜に急に緊張の糸が緩んでバーンとはじけ、月曜日の朝、ネクタイを締めて気も引き締める、というような緩慢の差があるのも精神衛生上よくないようにも感じる。別に気を引き締めるべくして引き締めるんじゃなくて、日曜日からの延長線でそのまま会社に行って仕事をする、そのかわり仕事ができなくなるくらい休日に思考停止するんじゃなくて、ある一定のレベルのテンション(張力という意味で)を保っておく、そういう過ごし方が理想だ。実現はできておらず、月曜日の午前中の事務処理速度はナマケモノ並みだが。



①ぐうたらな過ごし方に別れを告げるため、②少しでも話のネタにでもなればいいなという思いで、③今までのめり込んでいた「音楽」以外のエンターテイメントに徐々に足を踏み入れて少しでも人間としての「厚み」がでれば、という3つの理由から、舞台のチケットを買った。舞台「拡散していく、彼女」を観に渋谷へ行く。



ここ最近の寒波による寒さに委縮しながらもたどり着いた土曜日の渋谷。普段はギャラリーとして開放されているというその場所「渋谷ギャラリー・ルデコ」そう目的もなければ決して足を踏み入れないであろうそんなビルに入っていく。ちっちゃいエレベーターで3階へ昇り、フロアーに入ると、50人くらいが入ったら酸欠で死んじゃうんじゃないかと思うような小さな空間があった。「舞台めちゃくちゃ近いじゃん」その小規模さに面食らうも、そんな敷居の低い感じが舞台鑑賞の駆け出しにはふさわしいのだと胸をなでおろす。



だいたい、これを観に行こうと思ったのも、迷った挙句に「よしっ!」と決心して、というほどでもない。大好きな神奈川ローカル番組「sakusaku」で元MCの中村優ちゃんが宣伝していたのを観て、本物の美人タレントが見られるという下心と、2800円というチケットの安さ(いままで見たブルーマンとかblast!とかは8000〜10000円と、心拍数を平常に保ったまま買えるような少額なモノではなかった)の二つの要素が絡み合い、その場でチケットの申し込みをサクッとしてしまった。さすがsakusaku



物語は、少ない登場人物でシンプルに、そして平穏に進んでいく。映像を駆使してシンプルな構成をリアルにしている。ところどころでクスッと笑わせるのがイイ。主演の角田氏、イマドキの兄ちゃんみたいな感じなのに、言葉遣いがきれいで好感が持てた。そして中村優ちゃん、めちゃめちゃ美人だった。めちゃめちゃ背が高かった。sakusakuそのままのド天然キャラに安心した。



「えっこういう終わり方?」ていうようなちょっと不完全燃焼感の残るストーリーだったが、自分の仕事に対する態度について考えさせられる内容ではあった。はたして自分は「他に趣味とかやることがなく、パソコンの画面を見ながら一日中仕事をしている人」に対して軽蔑するのか?尊敬するのか?土曜日になったからはい、仕事を忘れて大はしゃぎ、じゃなくて、24時間365日、仕事のことが常に頭の中にあって、一日中仕事をすることも苦痛でもなんでもない。少しでも気になることがあったら、日曜日だろうが夜中だろうが、会社に行ってパソコン見て確かめる。そのかわり、平日だからと急激に緊張するのではなく、適度にリラックスしてる。本来仕事はそうであるべきだとぼくは思う。これがまたしばらく経つと、外国のビジネスパーソン的生き方に憧れて、「休日に仕事なんてやってられっか!人生は遊ぶためにあるんじゃ!!」なんて言いたくなるかもしれないけれど。ぼくは優柔不断。仕事に対する考え方ひとつとっても、その態度は右へ左へ拡散していく。