一輪挿し

「週に一度、花屋で花を買う」松浦弥太郎さんのエッセイにそうあって、これまでの自分には全くない習慣だったものだから、感銘を受け、自分も真似をしたくなった。そう思ってずいぶん経つけれど、真似できていない。それほど、部屋に花があるという状況を愛せていない。基本、装飾はあまりしたくない。

 

とはいえ、何もない殺風景な部屋はやはり味気なく、好きではない。モノを目に見えるところにごちゃごちゃ置いておきたくない性分で、普段使わないものはクローゼットの中にしまうことが多いけれど、そうすることで部屋から生活感が全くなくなってしまうのは困りものだ。そこはバランスと言うか、メリハリと言うか、が大事なんだと思う。

 

自分の場合、部屋の壁一面を陣取っている本棚の本は目に見える状態にある。いろいろな色、形、大きさの本の背表紙が半分無秩序に並んでいて、決して、きれいではない。これを隠そうと思えば、例えば扉をつけて、読みたい本を出すときに扉を開ける、というようにすることもできる。だけど自分がそれをしたくないのは、ランダムに並んだ本の背表紙を含めての本棚なのだ、という想いがあるし、たくさん並んだ本の背表紙を眺めながら「自分ってこんだけ本を読んでいるんだぁ」と満足感を得られる、その気分こそが大事だという想いがあるから。だから本を隠すなんて、とてもじゃないけどできない。

 

このように、インテリアとしては一見無駄で、すっきりさせようと思ったら真っ先にしまうようなものも、あることで心にゆとりができるというか、「あってもなくてもいいもの」があることを許容できるくらい、おおらかな気持ちになれる。そのおおらかな気持ちが、自分にオトナとしての余裕をもたせてくれるのではないだろうか。そしてその「あってもなくてもいいもの」のひとつが、花だ。

 

ユースケ・サンタマリアさんが「オトナに」で一輪挿しをここ数年絶やしたことがないと言っていて、あこがれた。同じく「オトナに」でLUNA SEAの真矢さんが「いまの自分のドラムセットは点数が多い。ステージ衣装だと思っている。必要だからと言うよりも。だって部屋に絵とか飾ってる人がいるけど、これ生活に必要なの?って。必要ないんだけど、でも飾ってあったらいい。そういう感覚です」と言っていて、飾りの必要性も知った。もちろん質実剛健なデザインも好きだけれど、「装飾は悪だ。邪魔だ」と切り捨ててしまうのももったいない。というわけで、花を買った。

 

週末いつも行くスーパーで。敷居の高い花屋じゃなくて十分。斑入りの葉と黄色く小さい花がきれい。花の名前を店員さんに聞くのを忘れた。テーブルの脇に花瓶を置いて、しばらく育てよう。ユースケさんのようなオトナに、近づけるだろうか。

 


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