今日から、明日に向けて

音楽を聴きながら何かをするのが昔から苦手で、たいてい集中力を欠いてしまうから、避けてきた。音楽を聴くときは音楽を聴くことに集中したい。なんとなく聴きながら別のことをするなんてできない。そう思っていたのは、聴く音楽をそれくらい大好きなものに限定していたからなのだと、最近になって気づいた。聴くことに集中する必要などなく、ただ流れている音を聴き流している程度で良いのだと思った瞬間に、音楽を聴く態度についての視野が、格段に広がった。

 

いま、久しぶりに棚から引っ張ってきた懐かしいCDをかけながら文字を書いている。LUNA SEAのINORANが在籍していたロックバンド「FAKE?」のセカンドアルバム「TOMORROW TODAY」だ。大学時代、有り余る時間をあまり深く考えずに消費するようにロックを聴いていたころを思い出した。数年ぶりに耳にしたメロディが引き連れてくるのは、頭の奥深くにしまわれていた当時の青臭い自分の記憶である。

 

それから20年近い年月が経ついま、引き続きLUNA SEAの音楽に触れることができている幸運を想いながら、一方で、この短くない期間を経ても自分が充分に成長していないのではと、ふと自信をなくすことがある。自分に自信がないという悪いところは昔から全然変わっていない。それで「なんとかせねば」と危機感から成長への力が生まれるようであればまだ良いのだけれど、「まぁなんとかなるだろう」と楽天的に考えて危機感から逃げようとするのだから余計にたちが悪い。

 

「CUT」のガリガリに歪んだINOARNのギターサウンドを聴きながら、少々身体を揺らしながら、口ずさみながら、こうして楽しく文章を書けるくらいには、音楽に対して寛容になった。そういう点では成長したと言えるのか。