逆ソクラテス

小学生の頃の自分がどういう子供だったか、いまではほとんど覚えていない。感受性が強くて、大人からたくさんの良いことを吸収し、自身に蓄える素直な子供だっただろうか。たぶんそんなことはなく、何も考えずに遊び惚けていたのではないだろうか。

 

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」をようやく読み終えた。5つのショートストーリーが重なった短編集。特に「アンスポーツマンライク」が好き。主人公5人組がかっこいい。いつだって最初の一歩を踏み出せないと嘆く「歩」が勇気を振り絞ったことで一人の男を救う。「誰かの動きがきっかけになって、世界は良い方向へ進む」という普遍的なテーマのようなものを感じた。

 

読み終えて、改めて子供のころの自分を思い出す。もしも子供のころになにか試されるような機会があって、そこで勇気を振り絞るような出来事があったなら。未来であるいまは、もっと違うものになっていたのかもしれない。なんて、いまさら戻って確かめることもできないようなことを夢想する。

 

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)