一つを手に入れたら一つを手放す

新しい自転車に乗って、どこへ行くでもなく走ってみる。サドルが固いのか、触るとそうでもないのだけれど、座ると尻がやや痛くなる。座り方が悪いのか?でもスピードが出て、気持ちが良い。行動範囲が一瞬にして広まったような、大げさに言うと万能感があって、嬉しい。

 

新しいことに挑戦したり、何かを手に入れたりしたら、代わりに、いままで持っていたものを一つ手放す。そうするのが良いという意見に触れ、感動した。そうやって一つ一つに真摯に向き合い、熱中できるようでありたい。だから、大学入学と同時に始めて、抱え続けてきたクラシックギターを、今回手放そうと決めた。

 

16年間私の音楽ライフを支えてくれた相棒だ。寂しくないわけがない。それに、決して飽きたからとかそういうことではない。しかし、大学を卒業し、社会人になってからの12年間、引き続き上達し続けてきているのかというと、そんなことはない。手持ち無沙汰のときに抱えては、優しい音色に酔っていた。それだけ。向上心は、確かになくなってしまったかもしれない。

 

これから自転車という新しい趣味を真面目に味わうための、前向きなお別れだ。両方を同じように愛するなんてできない、と言ったらカッコつけてるみたいだけれど、そんな不器用な自分を許してほしい。と言いながら今日、買取店に持っていこうとしたら、ソフトケースがないことに気づき、戸惑った。これじゃまずお店まで持っていけない。出張買取に問い合わせをしたら、「クラシックギターは、店頭にお持ちいただいての査定となります」とのこと。世の中、なかなかうまくいかないようにできていらっしゃる。