安藤忠雄 仕事をつくる 私の履歴書


安藤さん。


たぶん一番有名な安藤さん。


自分の中で最も尊敬する安藤さん。


苗字が同じということが、血のつながっているということとイコールなのであれば、こんなに嬉しいことはない。


そんな安藤さんの履歴書。


以下、本書の著者である安藤さん(以下「安藤さん」)と、いまこの駄文を書いてる安藤さん(以下「安藤」)との履歴書比較。





1.独学でつかんだ天職


安藤さん:中学二年のとき、自宅の増築中、一心不乱に働く大工を見て、独学で建築を勉強し始める。意見を交わす友人がいない不安にさいなまれながらも、一年間は外に出ないくらいの覚悟で勉強をする。


安藤:中学生の時に自宅の増築工事があり、その時の図面を見て、設計士になりたいと思う。高校1〜2年の時は、絶対に大学には行かないと思っていたが、まわりに流される形で大学進学を決意、建築学科に進む。しかし、設計製図の課題作成中にセンスのなさを実感し、挫折する。ゼネコンで営業をしている現在、「建築学科を卒業した」と言うと、たいていの人に「なんで営業なの?」と聞かれる。「なんちゃって建築学科」とは安藤のことを言います。


2.「数学は美しい」と熱血指導


安藤さん:熱血教師に感銘を受ける。絶対的な回答が導き出せる数学が得意になる。祖母の教えから、宿題は家に持ち帰らず、その日に学校で終わらせていた。その数学教師に会っていなかったら、建築の仕事に携わっていなかったかもしれない。


安藤:中学のころから数学、とくに図形の問題は好きな方だった。「絶対的な回答が導き出せる」という点では、安藤さん同様、性に合っていたようだ。その絶対的な回答を導き出すまでのプロセスに夢中になった。正答にたどり着いた時の快感といったらなかった。逆に、人によって答えが違う国語などは嫌いだった。その考え方はいまでも変わらないが、結構解き方を忘れてしまっているのが悔しい。「数学教師」という点で印象に残っている教師は特にいない。


3.専門書片手に昼ごはん


安藤さん:「あなたは一級建築士ですか」と依頼主に尋ねられたのがきっかけで、一級建築士の資格をとるための猛勉強を始める。パンをかじりながら建築の専門書を読む。大学教育を受けていないところから、一級建築士一発合格。


安藤:ご飯を食べるときくらい、ご飯を食べることに集中させてください。ただし食べ物には頓着しません。駅そばでもコンビニのおにぎりでも十分です。


4.7か月ひとりでヨーロッパへ


安藤さん:一人旅で世界の建築を見てまわる。西洋建築を見て歩くうち、「建築とは、人間が集まって語り合う場をつくる行為にほかならない」と気付く。


安藤:そういう旅をしてみたいと夢見ながらも、お金を思いきり使って何かする、という度胸がなく、また仕事の忙しさにかまけてなにもしないことを選んで今日まで来た。自社で施工した建物・施工現場を見て満足してる時点で、もう末期症状です。


5.予算の壁を絆で超える


安藤さん:有名な「光の教会」を設計。夢は大きく、予算がない。質素で禁欲的、シンプルな空間をつくろうという想いから、暗闇を十字の光で照らすというアイデアを思いつく。しかし、小規模でコストも厳しい状況で、施工会社がなかなか決まらない。ようやく決まるも、やはりコストが合わず、悪戦苦闘の末、ようやく完成。その後、別の仕事でも当時の監督と一緒に仕事をし、人と人とのつながりの大切さを知る。


安藤:施工会社の立場。コストが合わない仕事に対して、なんとかコストを合わせて利益を得ようとすると、設計内容をいじめるしかない。あまり設計者の意志とかそういったものを考えない立場かもしれない。そして仕事量が多いときは、小規模で予算の少ない仕事は敬遠しがち。光の教会を施工した会社のように、ひと肌脱ぐような会社でありたいものだが、なかなかそうはいかないのが現実だろう。じゃあどうしたらそういう工事でも儲かるのか、という点を本気で考えたい。





「学歴も社会的基盤もない」そんなスタートから世界を代表する建築家になってしまう安藤さん。


そんな安藤さんを尊敬します。


「まだまだ自分は甘っちょろいな」と自分を鼓舞してくれる存在。


そんな存在の人間に出会えてよかった。


「自分の仕事は自分でつくる」これが自分のモットーです。


それを意識して仕事をしたい。


自分の力で稼げる人間になりたい。