千駄木のど真ん中で

9月30日。日曜日。

 

9月最後の休日は、台風上陸のニュースにおびえながら、でも一歩も家を出ないのは何とももったいなく、昼過ぎに家を出て都内を散歩してきた。

 

前職を退職するときにはまだ杭工事だった都内のマンション建設現場も、もう2階までコンクリート打ってて、工事現場らしくなっていた。時間が経つのは早いものだ。

 

赤坂から千代田線で根津、そして千駄木へ。雑誌でみて一度行きたかった、雰囲気ありげな喫茶店に入ってみる。

 

駅の出口の目の前、交差点の角に位置するレンガ造りのその建物は、その立地から満席なのではないかと懸念されたが、はいってすぐの階段を上って2階へ行って、そのまた奥のひっそりとした空気がただようテーブル席に、なんとか座ることができた。

 

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千駄木倶楽部」ケーキセットがリーズナブルでいい。水を持ってきてくれてから、注文するまで待ってくれる店員さんの心配りがいい。ショートケーキとモカのブレンドを注文して、待ち時間は安藤忠雄の本を読む。この喫茶店の落ち着いた空気、自分の世界に閉じこもれる環境と、安藤忠雄氏のストイックな姿勢と建築への情熱が見事にマッチして、はたして自分はどうだと奮起させられる。

 

建築家 安藤忠雄

建築家 安藤忠雄

 

光の教会」。低予算の中でいかに施主の真摯な姿勢を受け止めて具現化できるかという挑戦だった。「六甲の集合住宅」。斜面地でのⅠ期Ⅱ期に続き、頼まれもせずに勝手にⅢ期を想像して提案、当然のごとく断られたが、阪神大震災を機に建替えが必要になり、夢が実現したという小説のようなエピソードがいい。「住吉の長屋」。社会が成長の方向に向かっていくのに対し、それに抗って内に閉じこもろうとする居住者の生活を、否が応でも四季を感じる中庭に見出した。これらに共通する氏の考えは、その集合体である都市とは関係なく、住まい手が住まいに求める本質、使い手が教会に求める本質をとらえて、それを形にしようという姿勢、それ以外のものは徹底的に排除しようとするストイックな姿勢だと思う。そして以前も述べたが、仕事は請け負うのではなく、自分でつくるものだという視点に立って、能動的に建築をつくっていく。その考え方はすごいと思う。

 

(以下抜粋)

「人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている、無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う」

 

この言葉に、氏の建築に対する考え方、もっというと生き方が集約されているように思う。目標に向かってがむしゃらに努力する、その努力する過程そのものが実は幸せなのだと思えば、その過程を面倒くさがらずに踏もうと思えるだろう。

 

 

・・・そんなことを考えながら、千駄木のど真ん中で、ブレンドとショートケーキを味わった。窓の向こうのミスタードーナツは外までつづく行列。なんで?と思ったら「半額」ののぼり。ドーナツもいいけど、ブレンドコーヒーの方がうまいぜ、みんな。