10月11日。体育の日。
三連休最終日。
金曜日の夜、一週間お疲れ的な意味で「ついうっかり」はいってしまったお気に入りのラーメン屋「むげん」をでて、そのままさらに「ついうっかり」はいってしまったツタヤ。
そこで「ついうっかり」買ってしまった小説。
マリアビートル 価格:1,680円(税込、送料別) |
伊坂幸太郎 「マリアビートル」 角川書店
1.アル中の殺し屋「木村」:狡猾な中学生「王子」に息子をデパートの屋上から突き落とされ、その復讐のために東北新幹線に乗る。しかし、そこで逆に王子に捕えられ、ゲームに付き合わされる。
2.二人組の殺し屋「蜜柑」と「檸檬」:生真面目で論理的、小説を愛する甘い「蜜柑」と、大雑把で感情的、「機関車トーマス」を愛する酸っぱい「檸檬」。そんな凸凹コンビが大富豪「峰岸」のぼんぼんを誘拐から救い、身代金とともに新幹線で戻る途中、何者かに身代金のトランクを奪われ、さらには峰岸のぼんぼんを不覚にも殺されてしまう。焦った二人は、トランクと峰岸のぼんぼんを殺した犯人を探し回る。
3.ついてない男「七尾」:不運に見舞われるかわいそうな殺し屋「七尾」は、新幹線内であるトランクを奪って逃げるよう指令を受ける。トランクを奪うことに成功、上野で降りようとするが、そこでかつての敵「狼」に偶然遭遇し、降りられなくなってしまう。そこで七尾はまた不運にも狼を殺してしまい、新幹線内でトランクを探すものから逃れようと必死になる。
動く密室、東北新幹線を舞台に、大きく分けると3つのストーリーが同時展開していき、それらが徐々に絡み合っていく、前作「グラスホッパー」を彷彿とさせる殺し屋小説です。
あいかわらずの構成(登場人物の三文判ごとに章立てがあって、それぞれの登場人物の視点でのストーリーが交互に進んでいく)がとにかく面白い。
前作「グラスホッパー」の登場人物もでてきて、「これは『グラスホッパー』読んだうえで読んでてよかった」と思えました。
「檸檬」だとか「蜜柑」だとか「槿(あさがお)」だとか「狼」だとか「蜂」だとか、ネーミングセンスも素敵です。
ぼく個人的には「蜜柑」が好き。
相棒の「檸檬」と好対照。
理詰めで行動し、好きな小説のなかの一節を引用して話をするが、決して感情的な「檸檬」を馬鹿にすることはない。
二人のお互い負けず嫌いなところ(蜜柑は実は機関車トーマスの名前を憶えており、檸檬は実は頑張って難しい小説を読んでいたということ)は、たとえ殺し屋といえども、涙を誘うほどの友情を感じました。
だからこそ、蜜柑の手で王子に手を下せなかった点、檸檬によるダイイングメッセージをいかしきれなかった点は若干ながら残念でならない。
結局「王子」がどうなったのかもあいまいなまま終わらせちゃうところもニクい。
でも、それを差し置いても余りある、あまりにたくさんの出来事がどんどん重なっていくところは、さすが「伊坂ワールド」といえると思います。
本を読むのに人一倍時間がかかるぼくでさえ、この三連休で読み終わりました。
ただしこの三連休、ほとんど家でこの本読むしかしてなかったけど・・・
「グラスホッパー」を超えるボリュームの大作。
ぜひ読んでみてください。