センチ

9月1日。日曜日。

 

最近お気に入りの原木中山のダイニングでくつろぐ。

 

都内のおしゃれなカフェもいいけれど、千葉県は市川市民である以上、市川のステキなお店のことも知っていたい。

 

隅っこのテーブル席。壁に寄りかかりながら、パスタをほおばりながら、独り本を読む奇妙な客を、店員(きれいなお姉さん)は覚えてくれるだろうか。(覚えられたければ声かけろって話だが、チキンな僕には到底無理)

 

世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら

 

死神「アロハ」が現れ、「僕」の命と引き換えにあらゆるものを消していく。愛猫「キャベツ」と自分の命のどちらかを選ばなければならなくなった「僕」の決断は・・・

 

よかったですね。清々しい気持ち。「えっこれで終わり?」とダイニングで声を出しちゃったけど。この残尿感がいいのかもしれない。

 

黙々と時計の修理に励む親父の背中と、すべては「僕」のために時間を費やしてきた母の愛がすごい心に残る。

 

『家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。僕らはただ血がつながっているだけの、ふたりの個人だった。』(p178)

 

家族について、つい忘れがちなことに気づかせてくれる。

 

夜の、しかもダイニングのやや暗めの照明効果に助けられ、センチな気分で店を出る。日曜の夜に一人で店に入り、酒を飲むわけでもなくただ本を読み、若干目を潤ませながら帰るミステリアスな男を、店員(きれいなお姉さん)が覚えてくれていたらしめたものだ。