一点集中の読書

本を読んでいるときの自分の姿を想像するのが好きだ。ページに集中し、周囲のことをあまり意識していない、いわゆる没頭している状態。そのときに、幽体離脱するかのようにして、自分の姿を外側から眺める。実際には自分の姿など見ることはできないのだけれど、想像することはできる。いま自分はカッコよく映っているだろうか。誰が見ているわけでもないのに、そんなことばかり考えている。自分自身、黙々と本を読んでいる人を見ると素敵だなあと思うことが多いので、自分もそうでありたいと願っているのかもしれない。

 

読書の方法は人それぞれ。他人の「こう読むべき」にあまり惑わされずに、自分なりのペースで、自由に読む。それが読書の醍醐味だと思う。最後まで読み切らなくてもよい。どのページから読んでもよい。1ページ読んでみてなかなか頭に入らなかったら、無理してページをめくらず本棚にしまってもよい。黙読しても音読してもどちらでもよい。そして、もう暗記するくらい読んでいて、新たな発見などないと分っているのに、快感を味わうように何度も読む、それでもよい。あくまでも自分がそうしたいと思うスタイルで。そんな読書論を私は、若松英輔さんから学んだ。その考え方は、今の本屋としての仕事にも生きている。読書自体はぜひしてほしいと薦めるけれど、その方法は決して押しつけない。

 

例えば移動中の電車内。本の世界に熱中するあまり、降りるべき駅に到着したことに気づかず、降りそこねてしまうとか、正面に座っている人が立って席が空いたことに気づかず、隣に立っている人が斜め前に座りに行きにくくあたふたさせてしまうとか。それくらい本の中にのめり込めるような集中力があったらいいなあといつも思う。そんな一点集中の読書が私の理想だ。ただ実際は、どんなに頑張って集中しようとしても、周囲から意識が逸れるほどの集中はできないようだ。