憂鬱とアナウンス

乗り換え待ちの地下鉄のホーム。これから数か月間のやるべきことを思い、憂鬱を感じながら立っている。社会人になりたての頃とはまた少し違う、多少仕事を覚えた頃に抱える「思い通りにいかない歯がゆさと苦しさ」を思い出すかのようだ。線路をぼんやりと眺めるか、手にしている本を開くくらいしかできない。

 

そこへ、電車がやってくることを示すアナウンスが流れた。自分が立っている側のホームのアナウンスと、正面の反対側ホームのそれが、ちょうど同時だった。

 

「まもなく、中目黒行きの電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ちください。This train・・・」

「まもなく、北千住行きの電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ちください。This train・・・」

 

一方は男性の声で、他方は女性の声。まるでデュエットのように重なり合う二人の声に、少し胸が軽くなった。まあしんどいこともあるだろうけれど、あなただけじゃないし、たいした問題ではない。それに、どんな壁が立ちはだかってもノーテンキでいるよりも、思い悩んでいる方がよほど成熟したふるまいだ。自信を持ったらいい。そう言われたような気がなぜかしたのだ。自動音声にくすっとさせられるとは思わなかった。