机に向かい、ふと窓の外を見ると、夕方の空に月が浮かんでいた。窓の近くの場所に机を置いてよかったと思う瞬間だ。前の住まいのことをふと思い出した。
半年前まで住んでいた家は、地下にリビングがあった。しかしそれでも圧迫感、暗さはまるで感じなかった。吹抜けを介して1階の窓から空を眺めることができたからだ。夜には月が見えた。よく表現される言葉だけれど、月を眺めていると、自分という存在のちっぽけさを感じ、日常の悩みなんてどうでもよくなる。いくら小さくたって悩みは悩みであり、当事者にとって切実なもの。日頃そう思っている自分ですら、なんてくだらないことでへこたれていたのだろう、と落ち込んだり、さて頑張るか、と意気込んだりする。月には人間を励ます力があるのではないかと思う。
仕事でヘトヘトだったあの頃に眺めた月と、今眺めている月が同じものだという事実が、自分を前向きにしてくれる気がする。自分がどこに移動しようが、仕事を変えて新しいことに挑戦しようが、空には月があって、ただじっと日頃の行いを見守ってくれている。そう思ったら、「誰も見ていないから」と言ってへたなことをする、なんてことはできない。むしろ、「月が見てくれているから」と言って、一見無駄に思えるようなことにも一生懸命注力できるようになる。月は人間の心を動かし、本来あるべき場所へと導く力があるのではないかと思う。