Season14-10 英雄~罪深き者たち

シーズン14 第10話「英雄~罪深き者たち」

 

毎日見聞きし、考えることの中に、いかに先入観が紛れ込んでいるかということが、「相棒」を観ているとよく分かる。「こうあるのが当然だ」と思えば思うほど、術中にはまってしまうとも言える。何事も疑ってみることが必要なのだという事を、私は「相棒」から学んだ気がする。何でもかんでも疑えばよいという話ではないのだけれど。

 

音越栄徳が片山雛子と手を組んで、総裁選に立候補した。その演説中に爆発事件が起きる。片山雛子は、テロ組織「赤いカナリア」の本多篤人が自身を狙ったことを疑うが、右京と亘は、音越を狙った犯行と推理する。音越の地元は、出所後の本多篤人が娘の茉莉と一緒に暮らしていた村だった。右京は休暇中にその村を訪れ、かつて強い力を誇っていた議員である大黒が焼身自殺を図り、その大黒を蹴落とす形で音越が力をつけてきたという経緯を知る。一方、本多篤人は茉莉の死にも立ち会わず、爆弾をつくってテロ計画を画策し、片山雛子を脅す。

 

悪い噂こそあったものの、地元の子どもたちの居場所を作り続けてきた大物議員の自殺から生まれた復讐がテーマ。暴力から手を引いたとされていた本多篤人が、爆弾テロを策略してまで守ろうとしていたことが最後、明らかになる。その当事者が分かるシーンは迫力満点。「それは気づかない」と誰もが驚くのではないだろうか。先入観は禁物だ。

 

また、本多篤人は最後まで「テロを企てる革命戦士」という悪のイメージのまま、しかし一本筋の通った、彼なりの正義を貫く姿勢を見せる。ただの悪人という言葉では言い表せない、独特の人柄がにじみ出ていた。