子供の頃は、自分の体調が悪くなることを勘定に入れずに過ごしてきた。こうしたら風をひきやすくなる、とか、何を食べたら腹をこわす、とか、そういったことに注意を払わなかった。学校もほとんど休まない健康体だったことは自慢だけれど、体を労わるといった姿勢はほとんどなかった、と言わなければいけない。逆に健康でいられたことが奇跡のようだ。
社会人になってだいぶたってからだろう。常に元気であるという自身の体への期待が、少しずつではあるけれど揺らぐようになったのは。夜に大盛りのラーメンを食べた翌日、体調を崩した。新型コロナウイルスにも二度、感染した。そうでなくても、だるさに襲われて仕事に身が入らないことが何度もあった。腹の激痛に苦しめられ、病院に行ったら尿路結石があった。そして、脳梗塞で入院した。そうした状況に出会う度、それでも元の姿に戻ろうと頑張る体に触れ、自分が自分の体に勇気づけられる。
いま、体を労わる一つの取り組みとして、腹八分を心掛けている。満腹まで食べることをやめる。美味しくてつい腹いっぱい食べたくなることなんてしょっちゅうだけれど、我慢する。満腹状態でぼんやりしてしまうことがこれまで多くて、それだったら、空腹による不快を受け入れる方がまだ良いと思える。
腹が減っては戦はできない。空腹ではろくなことを考えない。とりあえず腹いっぱい食べるべき。そうした考え方も正しい。けれど、この教えが有効なのは多分過去の私だ。今はそこを一歩乗り越えて、おなかいっぱい食べて元気もりもりのその先の、体を軽くして最大のパフォーマンスを発揮すべき時なのだと感じている。