引越しを身軽に

大好きな雑誌「&プレミアム」のバックナンバーをパラパラと眺めていて、引越しの多い人生を送る人のヒストリーが目に留まり、読んだ。2~3年ごとに何らかの転機があって住居を替える生活を見ていると、身軽で本当にうらやましいなぁと思う。

 

私は昔から自分を定住志向だと思っていて、住む場所を変えるのにはそれなりの労力がかかるから、頻繁に引越すことへの躊躇があった。だから、そうならないようにという観点で住む家を選んできた。ただ、慎重に吟味してきたのかというとちょっと違う。これまでの引越しを振り返ると、数ある選択肢の中から厳選してここ、と決めるのではなく、ここしか考えられない、という住まいに自然とたどり着いた。そういう意味では、これまでの引越しにそれほどのストレスはなかったのかもしれない。

 

従前の家に対する未練は多かった。より良い暮らしになるからと思って引越したものの、残っても良かったのではないか、残っていればもっと楽しいことがあったのではないか、という考えもよぎった。大局的に見ると自分の引越しヒストリーを後悔したことはないけれど、もし引越さなかったら・・・という仮定で思うことはいろいろある。もし自分が住み替えに対するためらいが一切なく、遊牧民のようにその都度最適な住処を探して旅するように暮らす生活ができたら、もっと気楽に生きることができたのに、と思う。

 

雑誌に登場する人に共通するのは、状況の変化に応じて住まいを変えることに対するためらいのなさだ。仕事が変わった。体調を崩した。良い物件の紹介を受けた。手狭になった。さまざまな理由があるけれど、それらの状況を受け入れてかつ快適に暮らすための住み替えを、フットワーク軽く行っている。これが自分だったら、「いまの家に居続けるにはどう工夫するか」と考えるだろう。賃貸だったら敷金礼金だって引越し費用だってかかるし、住民票も移さなければならない。住み替えることによって生まれる作業・コストに目が行きがちだ。

 

ただ一方で、「そこを我慢して得られるものは本当か?」と問うことも大事だと最近気づいた。そこに居続けようとすることは、状況の変化による流れをせき止める行為ではないか、と。何か大事なものを得るチャンスを逃すことになるかもしれない。

 

どちらが良いかという絶対的な答えはなく、人によっても状況によっても違う。けれど、「住み続けることに価値があるんだ」と頑なになるのではなくて、サラっと移り住む心身の身軽さも必要だよな、と思った。