働き方のグラフ

将来のことをどこまで具体的に想定して行動するかが、生きる上で大事なのだと感じます。目の前のことだけに集中するのも良いのですが、広い視点に立って考えてみたら、目の前の行動がもしかしたら無駄なことなのかもしれないと気づく、ということもあると思います。

 

自宅マンションの植木の手入れに来た造園屋さんと話をしていて、こう言われました。「いま、若いうちに働けるだけ働いて、稼いでおくことが必要。例えば50歳までと決めること。それ以降は思うように動けないかもしれないから。自分にもそういう時があって、その時は昼夜問わず働いていたんだ」と。その話を聞いて、あまり先のことを、特にお金のこととかそういった現実的な視点で具体的にイメージしていなかった自分は、はっとし、同時に恥ずかしくなりました。いまと同じ感覚で例えば20年後も行動できるとは限らない。家族が増えて必要なものが増えるかもしれないし、病を患って文字通り動けなくなる可能性もある。そんな時に自分を助けてくれるのは、働けるときに存分に働いて得たお金かもしれない。そのお金が、年齢を重ねて収入も減り、行動範囲も狭くなった場合でも、安心して生活するためのセーフティーネットになりえます。そう考えたとき、その言葉のメッセージは強く、自分に突き刺さりました。

 

一方で、もう一つの考え方もあることに気づきました。ある点をピークに収入が減ることを想定して、それまでがむしゃらに働くのではなく、ある点に着いても減らないように、着実に実績を積んでいく、という方法です。グラフで考えると、ある点を頂点とした山状のグラフに対して、なだらかな曲線を描いたまま右へ進むグラフです。前者と比べると、ある時点での収入の量(グラフの高さ)は低いものの、ピークを超えても低くならず、結果として横軸とグラフで囲まれた部分の面積が同じであれば、収入額の累計は変わりません。むしろ年齢を重ねてからも変わらず価値を生み続けられるという強みが後者にはあります。

 

どちらの生き方が好ましいかというのは、人によって違うでしょうから、一概には言えません。体力に自信があるうちに働こうというのであれば前者が適していると思いますが、将来を見越して少しづつ着実にと考えるのであれば後者の考え方もありでしょう。だいたい、10年後20年後に自分がどういう状況であるかは誰も分かりません。なので「将来こうなっているはずだ」「こういう境遇に陥っているかもしれない」と予測すること自体、あまり意味がないとも言えます。

 

大切なのは、自分はどちらと明確に決めるのではなく、二つの(もしくは他にも)考え方があって、選ぶことができるのだと知ること。そしてこっちと決めたら、自分の判断力に自信をもって進むこと。もし予期せぬことが起きたら、それに応じて臨機応変に考え方を変えられる柔軟性と寛容さをもつこと。そんな大事なことを、造園屋さんに教えてもらった気がします。