早朝の松陰神社

朝、事務所へ行く前に自転車に乗って松陰神社まで走り、お参りする。それを日課にしたら、人生が変わるのではないかと思った。自転車を選んだのは、単にその時ジョギングを続けられる自信がなく、自転車なら続くだろうと踏んだから。それに、買ったばかりなのになかなか乗る機会がなく放置気味だった自転車に対して、乗らないければもったいないと思ったから。だから楽しく、楽に続けられるはずだった。

 

早朝の松陰神社は空気がきれいで、頑張って仕事しなさいと自分を叱咤激励してくれた。並んだ大木は一様に、社会を広く見て大きなことをせよと呼びかけてくる。一方で、松下村塾を模した建物の、その小さな和室からは、小さなことからコツコツと勉強して、いま目の前のやるべきことを誠実に、着実にこなしていくべきだという声が聞こえる。スケール感の異なる思想家の声に多少戸惑いながら、しかし強く、しなやかに進んでいくのがオトナなのだと心にしたためる。

 

空気はどこまでも澄んでいる。早朝であるからか人が少ないから、さらに神聖な気持ちを保ち続けていられる。自転車をこいでかく汗は、体から雑念を溶かして流してくれているに違いない。

 

そんな想いも時間とともにだんだんと薄くなり、いまではその習慣もなくなってしまった。これはいけないとも思いつつ、いまはそれよりもジョギングに夢中。さすがに走って松陰神社まで行く気力や体力は、ない。