「作家」と名乗ること

肩書は何ですか。そう聞かれると、いろいろやっているから一つに絞れないのだけれど、共通して言えるのは何かを作っているわけだから、ひとまとめにして「作家」と言うことにしているんです。いとうせいこうさんがそのようなことを言っているのを聞いて、なるほどと納得した。おおざっぱに言うとタレントというのが近いのかもしれない。けれど、小説だって書いてるし、ラップもやる。作詞もやるし、俳優として映像作品をつくってもいる。どれもが「これまでになかったものをつくる」と言えるから、作家。そういう名乗り方、いいなぁ、と思った。

 

ものをつくることに対するあこがれは、小さい頃こそあったものの、いまはそれほどない。いや、あこがれはあるけれど、つくれる自信がない。人一倍手先が不器用である自信はある。ちがうんだ、それじゃ逆だ。

 

しかし、ではいまの仕事を通して自分がなにをしたいのか、作業のその先の、目指すものは何なのか、と問うと、結局は「縁をもったクライアントに自由な暮らしをしてもらう」ということだと気づいた。ちょっと強引なこじつけにも感じるけれど、これだって、「それまで味わったことのない快適な暮らしをつくる」行為に他ならないのではないか。だったら、暮らしをつくる作家と名乗っても良いということか?

 

つくれるものの範囲は驚くほど狭い。それでも、新しい価値を提供できる、と堂々と言えるものがあるのなら、自分はそれをつくる作家だ、と胸を張って言いたい。