学芸大学と本屋

古本屋の街というと、神保町。そこで古本を探してまわるほど、古本が、また古本屋が、好きというわけではない。単純に、古本よりは新刊本の方が好きだ。いまの作家さんが書いたいまの話を味わいたいという気持ちからだ。古本が決して嫌いなわけではない。時を経ても褪せない良本もたくさんあると思うし、これまでもお世話にはなっている。けれど、古本屋で感じるワクワクは、新刊書を扱う本屋で感じるそれほどではないように思う。

 

そんな自分が、ひょんなきっかけで店に入り、好きになったのが、「古書 流浪堂」。店先には昔の生活雑誌が並んでいる。店内に入ると、建築関係の本から文庫本・新書まで、幅広く置いている。そして奥には小さなギャラリーがあり、定期的に個展も行っている。いまでこそギャラリー併設なんて珍しくもないけれど、その、従来の古本屋の枠を超えたところに、面白さを感じた。あるときのギャラリーで置いていた絵はがきは、いまも手元にあり、さて誰に手紙を書いて贈ろうかと迷っている。

 

流浪堂を出た後は、「BOOK AND SONS」の扉を、勇気を出して開ける。ちょっと敷居の高い、ビジュアルブック専門の本屋だ。一冊一冊が高めだから、気を引き締めて、よく吟味して、買う。ちょっとめげているときとか、財布が心配なときは、申し訳ないけれど立ち寄らないようにしている。立ち寄って、迷ったあげく買わない、ということはなるべくしたくないからだ。

 

そのあとはその足で「SUNNY BOY BOOKS」へ行く。とにかく小さな本屋さん。でもその中には宇宙がある。好きな作家さんのイラストが表紙を飾っている素敵な本に出会ったのも、確かここだった。吉祥寺の画廊で偶然出会った、1年365日毎日ブローチをつくって展示販売した作家さんが、定期的に個展をしているというのも魅力だ。うまく言葉であらわすことができないのだけれど、なんでだか「ちょっと寄ってみようか」という気持ちにさせてくれる本屋さんだ。

 

ここは神保町ではないけれど、本屋から本屋へ、ぶらぶらと散歩するように歩いてまわるのが、楽しい。おっと、それらのちょうど中間地点にある、無口で謙虚なお姉さんが出迎えてくれる週末限定カフェも、忘れてはならない風景だ。