ゲルニカ

ふと立ち寄ったいつもの本屋で手に取った本がきっかけで、また別の新しい本に目が留まることになった。

 

事務所内でフィンランドやスイスの建築の話題があり、聞いているなかで、バーゼル美術館やバイエラー財団美術館でのアート作品の話になった。絵画など芸術作品にはまだまだ疎く、知らないと恥ずかしいこともあるなぁと思いながらなかなか勉強できていない。だから名画と言われるものを多少なりとも知っていることがまず重要で、だからそれに関する本を探そうと思った。

 

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)

 

 

26枚の名画について書かれた本書。少しづつ読んで、その絵の背景や込められた想いを味わいたい。

 

真っ先に見たのがピカソの「ゲルニカ」。小学生のときだったか、中学生の時だったか、授業でその絵を観て衝撃を受けたのを憶えている。ただこの絵の何が自分の心を締めつけるのか、その理由は分からなかった。そしてこの本で、イラクが大量破壊兵器をつくっていることを示すための国連安保理の記者会見で、パウエル国務長官の背後にあるはずの「ゲルニカ」に暗幕が掛けられ、姿を消したという事件のことを知る。スペインの内戦で空爆を受け、泣き叫ぶ人や馬。ピカソが反戦のメッセージを込めた「ゲルニカ」を隠し、戦争を正当化しようとする。そこまでするアメリカに恐れを感じた。

 

その後、別の本屋で小説コーナーの棚を眺めていたら、インパクトのあるタイトルが目に飛び込んできた。「暗幕のゲルニカ」あっ、これはさっきの本の作者だ。そう気づいてから、まさにその「ゲルニカ」に暗幕が掛けられた事件にまつわるストーリーだと知る。「いちまいの絵」を先に手に取っていなかったら、目に留まらなかったかもしれない。

 

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

 

 

ずいぶん昔に見ていながら、その絵のことを少しも知らなかった自分。これまで無頓着だったのは、きっと心の中に「絵を観て『カッコいい』とか『きれい』とか感動することはあるかもしれないけれど、それ以上のモノはない」といった諦めを感じていたからだと思う。しかしこの2冊がきっかけで、(反戦の象徴を覆い隠して戦争を正当化する、人間のあざとさと一緒に)アートに人を動かす力があることを知った。そういう力を備えているのだと信じていいのだと思った。だから、もっとアートを知って、アートに動かされる人間であろうと思った。